聞き手/藤井 省吾(日経BP総合研究所副所長)

有数の独立系バイオ医薬企業としてグローバル展開し、日本では医療アクセスの提供に取り組む。さらに、企業倫理、多様性・包摂性・一体感に注力。次世代の科学者育成に向けて奨学制度などを充実させている。

アムジェンの企業概要とこれまでの取り組みを教えてください。

スティーブ・スギノ
スティーブ・スギノ
アムジェン 代表取締役社長
カリフォルニア大学卒業後、日本と米国の銀行・製薬企業を経て、2017年4月アムジェン入社。バイスプレジデント、アステラス・アムジェン・バイオファーマのゼネラルマネージャー、同年6月アステラス・アムジェン・バイオファーマ代表取締役社長。20年4月より現職(写真:大槻 純一)

スティーブ・スギノ氏(以下、敬称略) 当社は2020年に創業40周年を迎えた独立系バイオ医薬企業です。1980年に3人の科学者によって設立され、現在では米ダウ・ジョーンズ平均株価の構成30銘柄の1つに成長しました。世界全体では従業員数2万4000人、売上高約250億ドル、研究開発費約40億ドル、承認された医薬品は20品目におよびます。

 21世紀はバイオロジーの時代と言われ、ライフサイエンスは黄金時代を迎えます。アムジェンはその最先端を走っており、今後さらに成長するものと確信しています。

 世界3位の製薬市場である日本では20年4月、アステラス製薬との合弁会社を完全子会社化しました。

現在取り組んでいるESG領域を紹介してください。

スギノ ESGの基本原則は「TripleWin」、日本語で言うと「三方よし」です。社会・ビジネス・従業員が、連動して機能する必要があります。

 これらを通じて取り組むべきテーマは4つ。「私たちが働き生活する地域社会を支える」「医学的に健全で倫理的に事業を行う」「次世代の科学者を鼓舞する」「多様性にあふれる包摂的な職場をつくる」ことです。

 このテーマにそってグローバルで取り組んでいるのが、「環境の持続可能性」「多様性・包摂性・一体感」「医療アクセス」「倫理的研究」「コミュニティーへの投資」「責任ある調達」「企業倫理」という7つのESG領域です。

「医療アクセス」には特に力を入れていますね。

スギノ 医療アクセスとは、患者さんが適切な費用で必要な治療を受け、医薬品を入手する機会のことです。そのお手伝いをするためには、いくつかの要素があります。

 1つ目は、「患者さんが医療や医薬品を得られ、対価の支払いができること」です。他の国とは異なり、日本には優れた皆保険制度があります。就労環境や収入などにかかわらず医療が受けられるので、日本の事業ではあまり注力していません。

 2つ目は、「患者さんのヘルスリテラシー向上」です。例えば、日本には片頭痛の疾患を抱える人が約840万人いて、そのうち100万人は治療が必要だと推定されています。しかし、専門医が限られる上、神経疾患のため受診をためらう患者さんも多くいます。

 こうした人たちに正確な情報を伝えるべく、日本頭痛学会監修のもとLINE傘下の遠隔医療相談「LINEヘルスケア」をプラットフォームに片頭痛疾患啓発サービスを開始しました。片頭痛や慢性頭痛を持つ人たちへの情報提供、専門医の紹介を行っています。