聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

生物多様性の復元に取り組み、産廃業者としての評価を上げた。次の目標としてエネルギー供給産業を挙げる。

石坂産業(本社:埼玉県三芳町)は産業廃棄物処理業とともに、里山保全も手掛けてきました。経営の中でESGをどう位置づけていますか。

石坂 典子(いしざか・のりこ)
石坂産業 代表取締役
1972年東京都生まれ。高校卒業後、米国への短期留学を経て、92年父親が創業した産業廃棄物処理会社、石坂産業入社。2002年社長に就任。16年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」情熱経営者賞受賞(写真:村田 和聡)

石坂 典子 氏(以下、敬称略) 私たちは環境ビジネスとして産廃処理業に取り組んできたので、ESGの考え方は根底にあるものでした。しかし、産業廃棄物は「安く処理してほしい」と金銭面のみが重視されてきた業界でもあります。ESGという言葉が広がって、環境に配慮するという企業課題が打ち出されたのは、当社のチャンスかもしれないとの期待感がありました。実際に里山の保全事業で地元の人たちと連携を組んだことで「いい会社だ」と声を上げてもらえるようになり、地域の評価がプラスになって取引量が増えた実態もあります。

実際、どのように地域との連携を図りましたか。

石坂 かつて近隣の森で不法投棄が続き、生物多様性が崩壊していました。ボランティアでひたすらゴミを撤去し、生物多様性の復元に取り組んだのです。絶滅危惧種が復元して1300種の生態が呼び戻され、「三富今昔村(さんとめこんじゃくむら)」(埼玉県)として子供の環境教育の場に生まれ変わりました。年間約5000人の子供たちが遠足や社会科見学に訪れ、親からの評価も高まりました。社会貢献活動の相乗効果で「ここで働きたい」という若者が増えて雇用が生まれ、地域経済が活性化されます。人とのつながりで取引先も増える。ステークホルダーを巻き込む活動で会社が評価されたと感じます。

ビジネスの面で次の目標や課題はありますか。

石坂 エネルギー供給産業を目指したいと考えています。廃棄物はすべて再生できる時代をつくりたい。そのためには私たちのような単体の事業者の努力だけではなく、ものの作り方から変える必要があります。製造段階で生態系に影響しない素材を選ぶのもひとつの方法です。

 廃棄物を100%再資源化するために、企業や個人活動家など、パートナーシップを結ぶための「ISHIZAKA START-UP LAB」を2020年4月に発足させました。サーキュラーエコノミー(循環経済)にどう関わっていくか、挑戦していきたいと考えています。

 課題は、会社が目指す方向性に、どうすれば社員がついてきてくれるかということです。「ISHIZAKA START-UP LAB」は、人との縁を結びながら社会課題を解決していく当社の取り組みを社員に理解してもらうといった目的もあります。