聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

産業フィルム製造の技術と知見を生かして、コロナ感染対策用製品を次々に商品化する。10年後を見据えた経営ビジョン「Next10」を見直し、脱炭素のロードマップ再構築に取り組む。

事業概要などを教えてください。

神田 進(かんだ・すすむ)
神田 進(かんだ・すすむ)
大倉工業 代表取締役社長執行役員
1977年大倉工業入社、2010年取締役合成樹脂事業部製品グループ統括、13年取締役合成樹脂事業部長、16年常務取締役合成樹脂事業部長、17年代表取締役常務取締役合成樹脂事業部長、18年代表取締役社長。20年より現職(写真:小山 壮二)

神田 進 氏(以下、敬称略) 2022年7月に創立75年を迎えます。終戦後、創業者が勤務していた倉敷飛行機の従業員の生活を守り、社会の復興に役立つことを目的に、住宅と木材事業でスタートしました。その後、1950年代の石油化学産業の勃興期にポリエチレンフィルムの将来性に着目し、社名を大倉工業としてフィルム事業に進出しました。

 現在はパッケージングなどの合成樹脂事業、電子材料や光学材料などの新規材料事業、木質チップを固めたパーティクルボードを中心とした建材事業を展開しています。

コロナ禍は業績にどう影響しましたか。

神田 新規材料事業の自動車関連、OA機器関連は、売上高が半分以下に落ち込みました。一方、巣ごもり需要により液晶テレビ用の光学フィルム、消毒液やハンドソープのパッケージ材料などは需要が伸びました。

 20年4月に厚生労働省からの要請を受け、新型コロナウイルス感染症の予防製品として医療用プラスチックガウンの代替品を作り、40万枚を医療機関に提供しました。簡単に装着できるフェイスシールドも手掛け、地元の自治体に提供しました。その後、両製品ともネットで販売しています。

 香川大学医学部から協働の開発依頼があり、内視鏡用ウイルス感染防御システム「Endo barrier®」を製品化しました。飛沫防止フィルムとフレームで、医療従事者が安心して内視鏡検査を行える仕様です。これまでに全国の46病院で採用されています。

コロナ禍で経営ビジョンを再構築

10年後を見据えた経営ビジョン「Next10」を19年に発表しました。

神田 10年後の「ありたい姿」を、「要素技術を通じて、新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」と明確に描き、ESGを経営の根幹に据えた「Next10」を作成しました。

 ところが20年10月以降、脱炭素が世界的な課題として浮上し、コロナのパンデミックで社会情勢が大きく変わりました。そこで、「Next10」を見直すことになりました。

 22〜24年の第7次中期経営計画をブラッシュアップし、30年を最終年度とした長期計画を再設計しています。CO2削減目標値などを含めた新しい計画は、22年初旬に公表します。