聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

国際的な官民ファンドとして、途上国でまん延する感染症の治療薬やワクチン、診断薬の開発を支援する。9年間で約100プロジェクトに260億円を投資、国際保健の分野で日本の役割を果たしていく。

公益社団法人「グローバルヘルス技術振興基金」(GHIT Fund、以下GHIT)の設立の背景と概要を教えてください。

井本 大介(いもと だいすけ)
井本 大介(いもと だいすけ)
グローバルヘルス 技術振興基金 エクスターナルアフェアーズ&コーポレートディベロップメント ヴァイス プレジデント
2001年東京大学法学部卒業後、国際協力銀行入行。08年組織統合により国際協力機構(JICA)勤務。12年フランス INSEADにてMBA取得。13年日本イーライリリー社、17年スイスに本部を置く国際非営利組織DNDiの日本事務所事務局代表、20年より現職(写真:村田 和聡)

井本 大介 氏(以下、敬称略) 日本政府(外務省、厚生労働省)、日本の製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を拠出し、2012年11月に設立された日本初の国際的な官民ファンドです。13年4月に活動を開始しました。

 マラリア、結核、顧みられない熱帯病のための治療薬やワクチン、診断薬に対して投資を行っています。政府、民間企業、財団の3者が資金を拠出し、研究開発のプロジェクトに投資する例は当時、世界でも画期的でした。

 これまでに約350億円の資金を調達し、約100のプロジェクトに260億円を投資しています。1期5年で活動し、現在は第2期の4年目です。

GHITのビジネスモデルはどのようなものでしょうか。

井本 私たちは研究開発のプロジェクトを「助成する」のではなく、「投資する」という言い方をします。

 投資案件は、例えば、日本の製薬企業が主体ならば、海外の企業とパートナーシップを組んだプロジェクトが対象となります。国内だけの取り組みは、投資の対象になりません。多様な視点で国際的な課題に対応するために、海外とのコラボレーションがシステム化されています。

 もう1つ、重要なポイントがあります。民間企業からは製薬企業など16社が資金拠出パートナーとして参画していますが、それらの企業の研究開発案件が投資先として優先的に選考されることは一切ないということです。「資金の拠出」と「投資対象」をリンクさせないことで公正を保ち、お客様の信頼を得るようにしています。

ガバナンス体制については、どうような点に留意していますか。

井本 案件の公募は年2回です。適格性を外部審査員と選考委員会で評価し、投資案件として理事会の推薦を受けて承認します。

 外務省、厚労省、製薬企業、ゲイツ財団、英ウェルカム・トラストからなる評議会があります。評議会は定款に定められた重要事項の議決などを行いますが、案件の選考には関わりません。民間企業に例えれば、評議会は株主総会、理事会が業務執行を担う取締役会に相当します。

■ GHITの投資概要(2013〜21年度) ※2021年8月時点
■ GHITの投資概要(2013〜21年度) ※2021年8月時点
出所:GHIT Fund
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