聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

コロナ禍で「空気の質」向上に技術開発を強化し、飲食店の窮状にも対応する。温室効果ガス削減効果の高い低温暖化冷媒など技術のグローバルな普及を進める。

新型コロナウイルス感染症で事業にどんな影響がありましたか。

澤井 克行(さわい・かつゆき)
澤井 克行(さわい・かつゆき)
ダイキン工業 常務執行役員東京支社長
1958年大阪府生まれ。82年ダイキン工業入社、2003年ダイキンヨーロッパ社出向(部長)、04年空調生産本部グローバル事業推進部長、11年執行役員人事・総務担当、15年執行役員滋賀製作所長、コーポレートコミュニケーション・人事・総務担当、20年執行役員CSR・地球環境・渉外担当、東京支社長、東京支社渉外室長。21年6月から現職(写真:中島 正之)

澤井 克行 氏(以下、敬称略) 2020年度前半は厳しい状況でした。ですが、これを機会と捉えてグローバルで部門横断的な営業体制の再強化、サプライチェーンの強じん化、固定費の削減、そして得意分野の「空気」に特化した商品開発など主に6つの施策を実行しました。

 特に商品開発では、感染防止に貢献する「空気の質」の向上に努めました。室外の空気を取り込める機能があるエアコンは従来、上位機種だけでしたが、中位〜普及機にも装備して20年秋、21年春に新製品を投入しました。21年10月には外気を取り込んでさらに室内の空気を外へ排気できる住宅用エアコンを投入します。

 換気が重要な飲食店は、営業自粛による収入減でエアコンの買い替えも難しい状況です。既設のエアコンに後付けで追加設置して室内の空気を入れ替えられる熱交換ユニットを開発し、まず日本で20年秋に発売しました。これは自治体の補助金なども活用できるため、飲食店は安価に導入できます。今後はこれを海外でも展開します。

 全体で見ると20年度後半から中国や日本、欧米で需要が徐々に回復に向かい、21年3月期は売上高で約2兆5000億円、営業利益は2386億円を確保しました。21年度は現時点で、通年で売上高2兆8100億円、営業利益で2900億円を目標としています。

低温暖化冷媒ガス特許を無償開放

50年のカーボンニュートラルの達成を目標に掲げた背景は何でしょうか。

澤井 18年に国際エネルギー機関(IEA)が発表したリポート「TheFuture of Cooling」は、50年には全世界で冷房に使う電力量が現在の3倍になり、CO2排出量も急増すると指摘しました。日本のエアコン普及率はほぼ100%ですが、世界では普及していない地域がまだ多いからです。当社は18年に「50年に温室効果ガス実質排出ゼロ」を目指す「環境ビジョン2050」を策定し、具体策を検討してきました。

 戦略経営計画「FUSION25」では、25年に未対策のまま本業が成長した場合と比べ19年比で温室効果ガスを30%削減、30年に50%削減という目標値を設定しています。インバーターや冷媒の再生、ヒートポンプなどの省エネ技術の開発・普及を進めると決めました。