聞き手/田中 太郎(日経ESG経営フォーラム事業部長)

2030年度までにスコープ1とスコープ2の温室効果ガスを30%削減する道筋は見えてきた。環境価値の高い素材を提供して顧客の脱炭素に寄与し、2050年度カーボンニュートラル達成に貢献する。

中期経営計画では、4つの社会課題と持続可能な経営基盤の強化をマテリアリティに設定しました。

小山 俊也(こやま・としや)
小山 俊也(こやま・としや)
帝人 取締役常務執行役員 CSR管掌
1986年帝人入社、2013年帝人グループ理事 新機能材料事業開発部長、15年帝人グループ執行役員、17年帝人グループ常務執行役員マテリアル事業グループ長、20年4月マテリアル事業統括、20年6月取締役常務執行役員(現任)、21年4月より現職(写真:村田 和聡)

小山 俊也 氏(以下、敬称略) 2030年のあるべき社会の姿からバックキャストして、取り組むべき社会課題としてマテリアリティを設定しました。「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」、そして「持続可能な経営基盤のさらなる強化」の5つです。

 それから1年たって、社会の環境問題に関する意識は大きく変わったと感じています。20年は新型コロナウイルス感染症拡大により、世界中でライフスタイルが大きく変化しました。米国では環境政策に積極的なバイデン政権が誕生し、国内でも政府が「2050年カーボンニュートラル」を発表しました。

カーボンニュートラル宣言の影響はありましたか。

小山 中計では18年度を基準年に、30年度の温室効果ガス総排出量20%削減を目標にしていました。21年4月に政府が30年度の目標を13年度比で46%削減に設定したので、当社も事業構造を洗い直し、より高い水準の30%削減目標に改定しました。

 欧州の工場では再エネ比率を100%に引き上げるなどの取り組みが進み、30年度までに直接排出(スコープ1)と間接排出(スコープ2)を30%削減する道筋は見えてきました。

 むしろ50年度にスコープ1・2を実質ゼロにする目標の方が、ハードルは高いでしょう。今のまま直線的に温室効果ガス削減が進むとは考えにくく、何らかの技術革新がなければカーボンニュートラルは達成できないと考えています。

 21年1月、オランダに欧州サステナブル先端技術開発センターを開設し、環境価値ソリューション領域の技術開発を強化しています。石油由来の原料で生産するアラミド繊維などをバイオ由来原料に切り替えることや、素材の再利用による資源循環、水素エネルギーへの転換という3分野の研究に取り組みます。

30年度までに「CO2の削減貢献量を総排出量より大きくする」という目標を設定しています。

小山 顧客の製品に使われる素材を提供して、サプライチェーンの川下のCO2削減効果を「貢献量」として算出し、当社事業とサプライチェーン川上の「総排出量」を上回るようにするという考え方です。これに加え、30年度までにサプライチェーン排出量(スコープ3)を18年度比で15%削減する目標も設定しました。

 17年に北米最大の自動車向け複合材料成形メーカー、コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスを買収しました。同社のガラス繊維強化プラスチックで自動車の軽量化が可能となり、燃費向上によるCO2排出削減が実現します。

■「中期経営計画2020-2022」のCO2排出量の削減目標
■「中期経営計画2020-2022」のCO<sub class="fontSizeXS">2</sub>排出量の削減目標
50年度ネットゼロ実現に向けて、CO2削減目標をより高い水準に改定した。30年度までに自社排出CO2の削減目標を18年度比30%削減に設定。サプライチェーン排出量も15%削減を目指す
* スコープ3排出量全体の2/3以上を占める排出源(スコープ3のうち、購入した製品・サービス全体の排出量から商社ビジネスを除いた部分)からの排出量の削減目標