聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

油脂を中核に様々な領域で新しい価値を創造し、成長を続けてきた。予測される機会とリスク、社会課題の分析から6つの重点領域を設定し、課題解決と目標達成に挑む。

消費者向けからBtoBまで、事業は多岐にわたります。

久野 貴久(くの・たかひさ)
久野 貴久(くの・たかひさ)
日清オイリオグループ 代表取締役社長
1985年日清製油入社、06年日清オイリオグループ理事 加工油脂事業部長、08年執行役員、14年常務執行役員、14年取締役常務執行役員。17年より現職(写真:村田 和聡)

久野 貴久 氏(以下、敬称略) 長期経営計画「ビジョン2030」では、価値創造を実現するための事業戦略単位を「油脂」「加工食品・素材」「ファインケミカル」の3領域に整理しました。

 事業の中核である油脂は、油脂・油糧と加工油脂から構成されており、売り上げ全体の80%を占めています。油脂・油糧では主に大豆や菜種から食用油と油粕を製造・販売しています。加工油脂はパーム油を原料とした製品をマレーシアの拠点を中心に展開しています。

 加工食品・素材は油脂の特性を生かし、チョコレート、ドレッシングなどの調味料、機能素材・食品、大豆素材・食品まで広がっています。チョコレートはグループ会社の大東カカオが事業を行い、インドネシアに業務用チョコレートの製造販売を行う合弁会社を設立しました。

 ファインケミカル事業は、国内・海外メーカー向けの化粧品の基剤を提供するほか、子会社のセッツが植物資源由来の除菌用アルコールや洗剤など環境・衛生ビジネスを展開しています。

コロナ禍で事業に影響が出ましたか。

久野 外食産業向けの業務用食用油は大きな影響を受けました。家庭用は内食需要を取り込んで調理油が伸びたほか、料理にかける食用油の需要が増えています。加工食品では、旅行など移動が制限されたことで土産品需要が減り、業務用チョコレートなどは落ち込みました。

 リモートワークで化粧品の消費が落ち込み、インバウンド需要が減ったことでファインケミカル事業も影響を受けています。ただし、全体で見ると2021年3月期の売上高、経常利益は前年を上回りました。

油脂から価値を創造する

30年のあるべき企業像をどのように描いていますか。

久野 油脂は人が生きるために必要な根源的なエネルギーであり、食品の基礎的な素材です。おいしい食事で人を笑顔にしたり、栄養機能で健康を支えたり、美を演出して活力を生み出すことができる無限の可能性を秘めたエネルギーでもあります。

 地球規模での社会課題の解決に寄与し、基幹事業である油脂と素材・技術・事業から生み出される「生きるエネルギー」をすべての人に届ける企業グループを目指します。