聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

住宅、医療、材料、インフラと4つの事業領域の技術力とESG経営を組み合わせる。社会のニーズに応えた事業開発に挑戦し続けることで、さらなる成長を目指す。

2020年5月に長期ビジョン「Vision2030」を策定しました。背景と狙いについて教えてください。

上脇 太(かみわき・ふとし)
積水化学工業 取締役 専務執行役員
1960年生まれ、83年積水化学工業入社。2011年執行役員、住宅カンパニー企画管理部長就任。住宅カンパニー広報・渉外部担当、同住宅商品開発部長、同商品開発部長を経て、17年常務執行役員就任。住宅カンパニーリフォーム営業統括部長兼経営管理部長、新事業開発部長を経て、20年より取締役専務執行役員経営戦略部長 兼ESG経営推進部、デジタル変革推進部、新事業開発部担当(写真:村田 和聡)

上脇 太 氏(以下、敬称略) 社会課題の解決を軸に、さらに成長に勢いをかけていくという思いが込められています。当社は2000年前後に赤字転落してから、収益性の向上と売り上げ拡大を目指して進んできました。その結果、この20年間で年間の売上高1兆円を達成したわけですが、次の10年間で2兆円の売り上げ目標を掲げています。背景には社会課題の解決の量を2倍に増やして、会社の成長を図るという大きなビジョンがあります。

様々な技術は社会課題の解決があってこそ。それをどう使うかという考え方ですね。

上脇 技術だけでは事業にはなりません。技術はあくまでも手段で、社会課題を解決するためにどのようなイノベーション(技術革新)を図っていくのかという視点がなければ、長期ビジョンで目標に掲げている売り上げや成長に届かないでしょう。社会課題の解決に重きを置く考えについては、数年前から、当時の社長がESG経営を強く打ち出していたので、既に社内にも浸透してきました。今後さらに加速させていきたい考えです。

住宅、素材、医療といった様々な分野があるなかで、それぞれの伝統ある技術をどう生かすのか、複数の技術をどう融合して対応するのか、どのように考えていますか。

上脇 とても重要な課題ですね。私自身、元は技術者として住宅事業に長らく携わってきましたが、当時は住宅以外のことは分かりませんでした。例えば、住宅と樹脂加工ではビジネスの内容は当然異なって見えます。ですが、全社の事業が分かるようになって、事業を横串にして捉えたときの可能性や新たなチャンスを感じています。当社が力を入れているまちづくりやインフラ整備とライフサイエンスや医療など、融合のヒントが数多くあるので、これからの成長の突破口になるのではないかという思いを強くしています。

 当社は今、融合というテーマに力を入れています。1つは融合のための枠組みをつくり、経営資源を投入していくやり方です。例えば各事業分野のカンパニーが技術を持ち寄って新しい事業を開発する際に、資金面で援助をしたり開発のための人材を増やしたりして、活性化させる。

 もうひとつはイノベーションセンターを作って、技術者同士がコミュニケーションを取れる場を用意することも考えています。ともすると事業部門は縦割りになって、他部署の技術者と関わらなくなる傾向があります。社外を含めた技術者が集まって共通のテーマに挑戦できる環境を整えたいと考えています。

■ 長期ビジョン「Vision2030」の概要
4事業領域を設定し、「ESG経営を中心に置いた革新と創造」を軸に、2030年の売上高倍増を目指す
(図版提供:積水化学工業)
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