聞き手/酒井 耕一(日経ESG発行人)

社会課題解決を使途とする「ソーシャルボンド」の引き受けで、迅速かつ適切な資金調達のサポートに注力する。コロナ禍で経済的に困窮する子どもたちを支援する個人向け社債も発行する。

新型コロナウイルスの感染拡大は社会経済にニューノーマル(新常態)を迫っています。証券会社の果たす役割について、どのようにお考えですか。

中田 誠司(なかた・せいじ)
中田 誠司(なかた・せいじ)
大和証券グループ本社 代表執行役社長CEO
1960年生まれ、東京都出身。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、大和証券入社。2007年大和証券グループ本社執行役、16年大和証券グループ本社取締役兼代表執行役副社長、最高執行責任者(COO)、17年より大和証券グループ本社取締役兼代表執行役社長、最高経営責任者(CEO)に就任(撮影:大槻 純一)

中田 誠司 氏(以下、敬称略) 新型コロナウイルスの感染拡大は、人類が直面する大きな社会問題です。ESG関連のETF(上場投資信託)に大量の資金が流れるようになり、サステナブルな社会をどうやってつくったらいいか、多くの人が真剣に考えるようになりました。

 国連がSDGsを採択した2015年は、世界経済の実質GDP成長率が3.5%でした。リーマンショック直後の09年はマイナス0.08%。そして20年10月にIMF(国際通貨基金)が出した、20年成長率見通しの改定値はマイナス4.4%です。今回の経済危機がいかに深刻であるかが分かります。

 14年時点で、SDGs達成のために必要な投資額と実際の投資額の差、いわゆる資金ギャップは5兆〜7兆ドルといわれました。資金ギャップは現在、さらに広がっているでしょう。政府の財政支出だけでは賄えなくなっており、民間金融が果たす役割が非常に大きくなっています。

 資金の出し手である機関投資家や個人投資家と、資金を必要とする国、国際機関、企業、NPOなどをつなぎ、円滑に資金循環を促すのが証券会社の果たすべき役割です。その役割がいっそう大きくなっていると感じています。

 いわゆるグリーンボンド、SDGs債といった、社会の課題解決に使う資金を調達するための債券の発行が増えています。福祉や教育などの課題解決のためのソーシャルボンドの発行も今後増えていくでしょうから、証券会社が果たすべき責務は極めて重要です。

証券会社が、適切な額の資金を適切な期間で調達する仲介役となるということですね。

中田 そうです。迅速かつ適切に、です。そこに証券会社ならではの役割があります。

 世界経済が順調だった15年でさえSDGsの17の目標と169のターゲットが抽出されたわけですが、現在はさらに社会課題が拡大していると考えられます。今、世界全体が課題解決に向かって進まないと、サステナブルな地球のコミュニティを守ることはできなくなってしまいます。

ソーシャルボンドで適切な資金を

様々なSDGsの取り組みをされていますが、今注力していることを具体的に教えてください。

中田 先ほども触れましたが、ソーシャルボンドなどを引き受け、きちんと投資家に販売していかなければなりません。

 大和証券グループは20年4月、世界銀行グループの一員であるIFC(国際金融公社)が発行するソーシャルボンドの引き受け主幹事を務めました。集まった資金は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた途上国の人々を支援するプロジェクトに充てられるというものでした。

 6月には大和証券グループ本社が、発行額(750億円)の0.15%(1億1250万円)を寄付する個人向け社債を発行しました。こちらの寄付は、NPO等を通じて、新型コロナウイルスの感染拡大で経済的に困窮する子どもたちを支援する団体に充てられます。

 SDGsにはダイバーシティ、働き方改革、再生可能エネルギーの育成など様々なテーマがあります。いずれも当社グループで取り組んでいます。しかし、今やるべきことはソーシャルボンドの発行を促して、必要なところに資金を届けることだと考えています。