ニューノーマルに関連した質問ですが、コロナ禍で経営や仕事の進め方はどのように変わりましたか。

中田 実は、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まったとき、いずれリモートワークの時代がくるだろうと予想していました。19年末には4000人の全営業員にタブレット型の2in1端末を配りました。

 これはパブリッククラウドを通じた基幹システムそのもので、この端末があればお客様の口座開設や受発注といった業務が出社しなくてもできるようになりました。端末を持って行けば、出張先であろうとどこでも仕事ができます。

 20年に入って新型コロナウイルスの感染が拡大した際には、本社の社員全員に配り、3月には全社員が2in1端末でリモートワークができる体制が整いました。4月に緊急事態宣言があり、その時点で3割出社体制にしました。

 しかし、テレワークで本当に生産性が上がるかというと、難しいところがあると思っています。仕事とは、やはり人間社会のコミュニティで行われるものです。今回のコロナ禍では、リアルでコミュニケーションのやりとりをすることの大切さが再認識されたのではないでしょうか。

 ですから、あくまでもリアルが主体で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)がそれを補完して生産性を上げていく。それが当社の目指す方向性ではないかと思います。

 役員会については、4〜6月は全員がリモート参加で開催しました。今は半分がソーシャルディスタンスをとりながら役員会議室に集まり、残り半分がリモートで参加しています。執行役員会議になると50人ぐらいいますから、こちらはすべてオンラインです。

通年採用の試みを実施

新卒採用で新しい取り組みがあれば、お聞かせください。

中田 20年に実施した新卒採用はコロナ禍でのことでした。オンラインだけの面接を実施した企業もあったようですが、当社グループでは6月の最終面接はリアルな面談で行うように指示しました。

 しかし、面接に来られなかった学生もいるでしょうから、通年採用的な試みも併せて行っています。21年もどこかのタイミングで大多数は採用しますが、それ以外にも採用の門戸を開いておき、多様性のある学生を採用したいと考えています。

 私個人の思いを言えば、大学生活の一番いい時期のほぼ1年間を就職活動に費やす今の仕組みは、極めておかしい。もっと勉強をしたりサークル活動をしたりして、学生生活を充実させるべきです。企業側も採用のあり方について、きちんと考える必要があります。

菅義偉首相が20年10月の所信表明演説で、「50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と明らかにしました。官民を挙げて実質ゼロに向けた動きが加速しますか。

「KPIの設定でSDGsを推進」<br><span class="fontSizeS">(撮影:大槻 純一)</span>
「KPIの設定でSDGsを推進」
(撮影:大槻 純一)

中田 そうですね。日本国内はもちろん、世界の動きにも目を配って目標と政策を考えることが大切です。

 今、SDGsでまず貧困をなくそうと多くの人が取り組んでいます。世界人口の7割が今後、アフリカ、中東、アジアで占めるといわれています。それらの多くが途上国であり、そこで暮らす人たちを貧困から救うには安価なエネルギーが必要です。

 カーボンニュートラルを目指すことと並行して、石炭火力の位置付けも変わっていくでしょう。CO2を減らしながら再生可能エネルギーの比率を少しずつ上げていく。そうした方向性を示すことが重要です。

 米国がバイデン政権になれば、SDGs、ESG、環境問題といった分野に、米国はこれまで以上にコミットしてくるかもしれません。

 ESG評価の基準についても、ESG投資の効果、費用便益などの定量化・可視化はまだ発展途上です。現在は欧州の評価機関が主導してグローバルスタンダードづくりを進めている印象がありますが、そこに米国が入ってくれば、欧州と米国との間で綱引きが始まるかもしれません。逆に言えば、そこにうまくアジャストしてグローバルスタンダードが生まれるかもしれない。つまり、現実の動きを見きわめることが大切なのだと思います。