安部 長年1つの事業を洗練させて規模を拡大してきた日本企業は、何かをガラッと変革(トランスフォーメーション)する力が極めて弱いのです。終身雇用を提供してゼネラリストの人材を求め、それぞれの役割を果たすための制度や教育プログラムを構築し、社員同士が協調して規律を重んじて事業を進めて、チームとして結果を出していくのが従来の日本の企業文化です。1つのことを突き詰めて新しいことにどんどんチャレンジして、チャンスがあれば転職してキャリアを積んでいく個人が主体の欧米の企業とは考え方や文化が異なります。

 そうした日本企業で働いている限り、トランスフォーメーションを起こそうという考えや動きは出てきません。日本はいつしかトランスフォーメーション力の最も低い国になってしまったのです。

 一方で世の中はどんどん変わっています。日本の消費者はどんどんデジタルツールを使いこなして便利なサービスが普及する一方で、企業はDXから取り残されているというギャップが生じ、生活者の変化やニーズに対応できていません。

 今こそ日本企業は思い切って自分のビジネスを壊すほどの覚悟をもってDXに取り組む必要があります。これからの時代の先駆者になるには重要なことです。

ESGの視点からもDXは重要になるのでしょうか。

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「変革のジャーニーへ一歩踏み出せ」(写真:中島 正之)

安部 企業経営で損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)が財務指標として重視されるように、従来の企業活動では有形資産が評価されてきました。それが今では無形資産の価値が高まっていて、ブランド力や組織力と並んでデジタル力が重視されるようになりました。企業が掲げるパーパス(存在意義)が環境との共生や社会をよくすることにどれだけ貢献するか、それが長期的・継続的な発展につながるか、株主やステークホルダーは注視しています。日本はこうした価値観を企業経営に組み込むのが遅れていますが、世界はどんどん変わってきています。

 今や消費者は価格が少し高くてもSDGsに貢献している企業から購入しようと意識するようになってきています。企業は、ESGやSDGsを事業に組み込んで経営していくことが重要になります。

コロナ禍で企業のデジタル活用は進み、仕事のやり方も変わりました。

安部 いま企業が進めようとしているDXは、社員自身の権限の範囲で実施している業務の「改善」活動です。確かに業務量が減ったり、効率化できたりしているかもしれませんが本当の意味でのDXではありません。日本の企業でDXが進まないのは、経営のトップが真剣に考えていないからです。DXという言葉が注目されているから「DXに取り組まなければいけない」と社員にハッパをかけているだけで、DXの先にある目指すべき姿を見せていないのです。目標を示すのはトップの責任であり、デジタルでどのように改革していくかを示す必要があります。

B&DXを設立したのは、そうした状況を変えるためですか。

安部 その通りです。経営トップの意識を変え、DXで目指すべき姿を一緒につくっていき、従業員に伝えて同じ方向に向かって動き出すところまでを手伝っていきます。いったん動き出せば、それが企業の文化になっていくはずです。

 当社の設立にあたって企業のパーパスを「Journey to Transformation」と定めました。顧客企業の真の変革を実現し、変化する社会の中で求められる、たゆまぬ変革の旅を先導する存在として歩むという決意を込めています。