聞き手/大塚 葉(日経BP 総合研究所上席研究員)

従来の「印刷」にとどまらない事業で、次々に新しい価値を生み出す。事業の推進と経営基盤の強化を両輪とし、印刷のノウハウと技術力で環境問題に取り組む。

大日本印刷グループは早くから環境問題に取り組んできました。

井上 覚(いのうえ・さとる)
井上 覚(いのうえ・さとる)
大日本印刷 常務取締役
1955年生まれ。78年に大日本印刷に入社。2008年技術開発センター長、13年取締役、技術本部、技術開発センター、環境安全部担当に。15年に常務取締役就任、21年より技術・研究開発本部、技術開発センター、サステナビリティ推進部担当(写真:髙田 浩行)

井上 1972年に環境部を設置し、92年に行動憲章の中で環境宣言を打ち出しました。2000年に発足した大日本印刷グループ環境委員会が本格的な取り組みのスタートです。その後CSR委員会と16年に合併し、20年からサステナビリティ委員会に改称しました。

20年3月に発表の『DNPグループ環境ビジョン2050』への取り組みや、その成果をお聞かせください。

井上 「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」を目指し目標を掲げています。脱炭素社会に向けては、30年までに15年比で温室効果ガス排出量の40%削減が目標です。パリ協定が求める2℃を十分に下回るWell Below2℃水準でSBTイニシアチブの認定を取得し、20年度では、30%の削減を達成しました。

環境負荷の高い事業からの転換

具体的な施策を教えてください。

井上 主に事業ポートフォリオの転換と省エネ活動によって実現しています。紙やフィルムを主とする従来の印刷事業は意図的に縮小し、付加価値の高いグローバルなものづくりや国内のサービス事業などに転換してきました。省エネ活動の観点からエネルギー効率の高い設備も開発しています。私自身も技術畑出身で、印刷工程でインクを省エネルギーで乾燥させる技術の研究を続けてきました。今後もこのような開発をさらに強化し、ボイラーや発電機などの自社が開発できない機器についても、インターナル・カーボンプライシングを意識した設備導入を進めます。

循環型社会の実現に関する進捗はいかがでしょうか。

井上 従来の廃棄物削減や有価物化中心から資源循環率に指標を切り替えて、バリューチェーン全体で資源の有効な循環を目指しています。海洋プラスチックの問題にも取り組むため、経済産業省や他の民間企業とともに「CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)」の設立にも参画しました。

 「パッケージ」のように最終的に廃棄されるモノも少なからず生産しています。ビジネスの転換はもちろん、プラスチックの代替として紙を利用する、モノマテリアルでリサイクルしやすい製品をつくる、生分解性の素材を開発するなど、様々な角度からのリサイクル促進が使命です。世界的な需要増が予測される水についても、工程の見直しによる削減や循環利用などを進めています。