聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)
健康に起因する事故を絶対に起こさない。「安全」「安心」を守るため、健康管理に注力する。燃料電池バスの導入、CO2フリー電力の活用など、環境負荷の低減にも積極的に取り組む。
「ヒューマンに行こう」を社是として掲げています。

1963年鹿児島県生まれ栃木県出身。86年早稲田大学商学部卒業後、東京急行電鉄入社。2006年東急バス・運輸事業部運輸営業部長、09年取締役営業部長。14年ベカメックス東急バス(ベトナム)初代取締役社長。19年東急執行役員国際戦略室長、21年4月東急バスおよび東急トランセ代表取締役社長(写真:中島 正之)
古川 卓 氏(以下、敬称略) 2021年10月に東急バスは創立30周年を迎えましたが、「ヒューマンに行こう」が生まれたのは創業当時までさかのぼります。
分社して一般管理費の負担が少なくなれば黒字化するという旗印のもと、1991年に東急電鉄から独立し、見事に黒字化を達成しました。
独立当時、人事労務を担当していた私が最初に取り組んだのは乗務員の採用でした。ポスターを作り、「ヒューマンに行こう」と入れました。採用向けのコピーだったんですね。そこに込めた思いは、「人間らしく、温かくて、もっと親密にお客さまと関わる」ということです。
2019年4月に「健康宣言」を制定していますが、企業経営の中でどのように位置付けていますか。
古川 「安全」と「安心」が当社事業の根幹であり、健康づくりを推進して「安全」「安心」な輸送サービスを提供することが第一です。2つ目に、いろんな雇用形態を用意し、明るく働ける「職場環境づくり」が重要です。3つ目として、従業員1人ひとりの幸福と企業の持続的成長が実現できるように「健康経営」に取り組むということです。
健康経営の推進体制として、当社の安全衛生管理規程では社長の私が中央安全衛生管理者(責任者)となり、産業医2人、保健師3人、そして社員サポート課を置いています。
年2回の定期健康診断のほか、脳血管疾患や心臓疾患、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を3〜5年に1回程度実施しています。