井手 航空機では電動化や新素材、社会インフラではたとえ壊れてもすぐに直せる橋梁など、今までの発想を大きく転換して開発を進めなければなりません。ところが、誰しもが従来の延長線上での思考からなかなか自由になれません。特に若い社員は声を上げにくい状況があります。それを変えて、自由闊達(かったつ)にものを言い、若い人の意見も押しつぶすのではなく、一緒になって考えていくようにしたい。

 答えがひとつの時代ではないので、社員がそうした発想の自由さを持つことが事業を成長させるきっかけになります。様々な考え方のもとで、小さな取り組みがたくさんあって、その中のどれかが芽を出す、失敗してもまたチャンスがある風土を作り出していきたいです。

ESG経営目指し、全社員と対話

具体的にどんな取り組みを進めていますか。

井手 20年11月から社内副業制度を始めました。就業時間の5~20%を新事業企画という“副業”に充ててもよいというもので、アドバイザーと面接をした上で認めます。認められた社員は半年間でアイデアを出して、高い評価を得たものは部門を作ったり、予算を付けて事業化します。スタートしたばかりですが、貧困解決への貢献や技術の新しい生かし方など面白い提案がいろいろ出てきていて、とても楽しみです。

ESG経営の進め方についてお聞かせ下さい。

井手 Eは「自然と技術の調和」、Sは「雇用の創出と貧困をなくすこと」、Gは「品質・安全・コンプライアンス」を念頭に、ESG経営に取り組んでいく考えです。

 ESGについて、まだ社員が自分ごととしてとらえ切れていないのが実状です。それを変えていくには、経営トップが繰り返し話していくことが大切との思いから、若い社員を手はじめに対話活動を進めています。20~30人単位の集会で、20年8月から既に30回ほど実施しましたが、3万人の社員全員と対話していくつもりです。

 私からの一方的な話にならないようにしていますが、参加者は全員、自発的に発言してくれるので、大きな手応えを感じています。