聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)

2021年5月に中計で50年カーボンニュートラルを宣言し、サステナブルな循環型社会の実現を目指す。社内の脱炭素を加速するため、社内カーボンプライシングを投資判断に取り入れ、環境ファンドも設定する。

2021年5月に25年3月期までの中期経営計画を策定しました。

川合 尊(かわい・たけし)
川合 尊(かわい・たけし)
日本特殊陶業 代表取締役社長
1962年10月生まれ。87年京都工芸繊維大学大学院修了後、日本特殊陶業に入社。2015年取締役常務執行役員、16年取締役 専務執行役員などを歴任。19年4月より現職(写真:上野 英和)

川合 尊 氏(以下、敬称略) これまで取り組んできた内燃機関中心の事業から持続可能な社会に対応できる新規事業への転換、言い換えれば事業ポートフォリオの転換が目的です。「変えるために、壊す。変わるために、創る。」をスローガンに、これまでの延長線上にない変化の実現を目指します。

 変わるためには資金も必要ですから、現業をさらに強化してキャッシュを稼ぐ。そのキャッシュを利用して、どんなものにも挑戦する気持ちで新規事業に取り組みます。

 セラミックスがコアビジネスであることは変わりません。そのコアから染み出してくる領域の、そのちょっと先で、新しいビジネスを考えていかなければなりません。

中計では50年カーボンニュートラルを宣言しました。目標達成のための施策を教えてください。

川合 内燃機関で仕事をさせていただいているからには、サステナブルな循環型社会実現のために、カーボンニュートラルに向けてより多く貢献していかなければなりません。

 そもそもスパークプラグや車載用酸素センサーは、内燃機関の排ガスをクリーンにするために使われています。新規事業に加え、これらの事業でも継続して低炭素化に貢献していく必要があると考えています。

 21年7月、社内の脱炭素の動きを加速させるため、社内カーボンプライシングを投資判断に取り入れました。来期の予算からは、各カンパニーから炭素税を徴収し、それを原資に環境投資を補助する環境ファンドを運用する予定です。25億円規模を見込んでいます。

 カーボンニュートラル・アズ・ア・サービスとして、酸素濃縮装置やSOFC(固体酸化物形燃料電池)など、当社の技術を提供する新しい事業も検討しているところです。

 役員報酬にESG指標を導入し、CO2削減率に対する達成度を評価に盛り込むことも行っています。

変わらなければ取り残される

40年の目指すべき姿“Beyond ceramics, eXceeding imagination”「セラミックスのその先へ、想像のその先へ。」というビジョンに込めた思いを聞かせてください。

川合 10年スパンで長期経営計画を考えると、内燃機関ビジネスは30年の時点では十分に利益が出ていると予想されます。今の延長線上で会社は存続できるということです。

 しかし、それではその先につながりません。内燃機関ビジネスがピークを過ぎ、電気自動車(EV)の普及が予想される40年を想定し、そこからバックキャストして30年のありたい姿を定めました。

 セラミックスの製品だけにこだわっていると視野が限定的になります。セラミックスをベースに新たな挑戦をしよう、今までの発想を超えていこうという思いを込めてビジョンをつくりました。