寄付型スキームも登場

 20年から国内でも発行が始まったSLBも、着実に広がりを見せている。21年6月には、ANAホールディングスによるSLBのストラクチャリング・エージェントを務めた。「環境」「人権」「ダイバーシティ&インクルージョン」「地域創生」を経営の重要課題として掲げており、これらに関する取り組みが反映されるESG関連外部評価指標をサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下、SPTs)に設定した。

 SPTsが未達の場合、環境や社会にポジティブインパクトを創出する活動団体に寄付をするという、国内初の寄付型スキームのSLBだ。

 「SPTsが未達の場合、クーポンステップアップにより、投資家にプレミアムを支払う設計のSLBが主流だが、一部の投資家から利率が変動することや、未達時のペナルティーが投資家に還元される仕組みに対して慎重な声があったため、対応策を検討した結果、利率変動のない寄付型スキームの確立に至った。結果として発行額200億円に対し、1200億円以上の需要を得ることができた」と、SMBC日興証券サステナブル・ファイナンス部のチヴァース陽子部長は経緯を話す。これを皮切りに、後続する寄付型スキームも発行されており、国内SLB市場の投資家層・発行体層の拡大に寄与したと言える。

 21年12月にはTDKが総額1000億円の社債を発行し、そのうち400億円をSLBとして調達した。SLBによる起債はエレクトロニクス業界初で、投資額の規模も過去最大となった。

 SLB起債に当たり、TDKが環境ビジョンとして掲げる「ライフサイクル的視点での環境負荷削減」をテーマに、14年度を基準として、「35年度までにCO₂排出量原単位を半減」という目標を掲げており、その達成手段となる3つの指標をSPTsとして選定した。目標未達時には、環境保全活動を目的とする団体・組織への寄付を通じて追加的なポジティブインパクトを創出する。

■ 直近1年のSMBC日興証券のストラクチャリング・エージェント案件
■ 直近1年のSMBC日興証券のストラクチャリング・エージェント案件
注:リニューアブル・ジャパンは、上場による調達予定額
(出所:SMBC日興証券)

市場のさらなる拡大に期待

 公共セクターでもESG債は増加の一途をたどっている。西日本高速道路(NEXCO西日本)は、21年9月に初のソーシャルボンドを発行した。高速道路の利便性の向上のみならず「道路の安心・安全の確保」にも取り組む。西日本地域では台風や豪雨などの災害が頻発しており、災害への備えが重要だ。

 NEXCO西日本のこれらの事業は、金融庁のガイドラインでも挙げられている「持続可能で強靭な国土」や「地方創生・地域活性化」といった社会的課題の解決に貢献するソーシャルプロジェクトであり、NEXCO西日本の債券による調達資金はすべて、高速道路の建設、改築、災害復旧、長期保全といった大規模なソーシャルプロジェクトに充当される。そのため規模も大きく、21年度は総額約5000億円もの発行を予定する。

 ESG債は今後ますます市場が拡大していくだろう。SMBC日興証券は企業のニーズに合わせた資金調達をさらに強力に支援していく。