「ポイントは4つ。独自に確立した技術であること。高い断熱性能がありながら非常に薄いこと。国内で初めて強化ガラス仕様に対応したこと。高い省エネルギー性能を持つこと」。

■ プラズマディスプレイの技術を活用
プラズマディスプレイパネル製造で培った高信頼性の真空封着技術が最大の武器だ
(図版提供:パナソニック)
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 この技術はPDPの製造技術を活用したものだ。PDPは2枚のガラス板の内側に電極や発光体などを形成し、ガラス同士を封着。ガラス内部を真空にしてからキセノンガスなどを封入した構造だ。ガラスの厚さは約2~3mm、ガラスとガラスの間は0.1mmである。

 一方の真空断熱ガラス「Glavenir」(非強化仕様)もガラスの厚さは3mm、隙間も0.1mmで基本構造は同じ。ただし電極や発光体などはなく、2枚のガラスがくっつかないようにピラーと呼ぶ材料を等間隔で並べて隙間をキープし、周囲を封着材で閉じてから内部を真空にする。PDPの製造技術が活用されているのがよく分かる。

 断熱性能は「熱貫流率(U値)」で表され、その値が小さいほど優れている。一般に断熱性能に優れるとされるトリプルガラス(3枚構成)のU値は0.8W/㎡・K、厚み33mmに対して、「Glavenir」(強化仕様)は0.58W/㎡・K、厚み8.1mmとなっている。つまり「Glavenir」は、断熱性能が高性能トリプルガラスより優れているにもかかわらず、厚みはわずか4分の1しかないのだ。

 3つ目のポイントは、国内で初めて強化ガラス仕様に対応したことだ。一般に強化ガラスは、普通のガラスを約700℃の高温に加熱してから表面に空気を均一に当て急冷して製造する。これにより、たわみに強いガラスにしている。ところが、封着材で周囲を閉じる時、封着材が溶ける高い温度にすると、どうしても強化ガラスの強度が低下してしまう。この問題を防ぐため、シールガラスと呼ばれる封着材の材質を工夫した「極低温封着材」を新たに開発し、低温での封着により強化ガラスの特性を損なわないようにした。

 この効果は大きかった。強化ガラスは強度があるため、ピラーの数を減らせ、熱ロスを抑えて断熱性能を高めることができたからだ。強化ガラス仕様の断熱性能は、非強化仕様に比べて約17%向上したという。ちなみに、ピラーというものは通常ステンレス鋼が使われるが、「Glavenir」では新たに非金属系の材料を採用し、ピラー1個当たり約200MPaの圧力に耐えられるようにしている。これは私たちが普段受けている大気圧の約2000倍に相当する圧力である。

 ほかにも工夫が見られる。従来品は真空引きするための穴とキャップが出っ張っていた。そこで、「フラット封止工法」を新たに開発し、これらの出っ張りをなくして美観と輸送効率の向上を実現した。

 こうした優れた断熱性能、薄さ、強さなどが評価され省エネルギーセンターが主催し経済産業省が後援する「2020年度 省エネ大賞」経済産業大臣賞を受賞した。

結露防止ヒーターが不要に

 真空断熱ガラス「Glavenir」を使うことによって、どんな効果が得られるのか。それが4つ目のポイントである省エネ性能だ。具体的に見てみよう。

 まず冷蔵庫を想定した断熱シミュレーション。庫内0℃、庫外20℃とした時、一般的な複層ガラス(ガラス2枚、U値2.9 W/㎡・K)だと庫内側の表面温度が5.7℃、庫外側が14.3℃となり、温度差は8.6℃だった。これに対して「Glavenir」(強化仕様)は庫内側1.4℃、庫外側18.6℃となり、温度差は17.2℃と大きく、断熱性能に優れることがわかった。

 以上は計算結果だ。実際のショーケースではどうだろう。パナソニック製の卓上冷蔵ショーケースで省エネ性能を実際に検証した。比較したのは従来の複層ガラスと「Glavenir」(非強化仕様、U値0.7 W/㎡・K)。室温は27℃、冷蔵は「強」に設定。複層ガラスは、庫内側のガラス表面温度が11.6℃、庫内棚中央部が6.7℃となり、その温度差は4.9℃。一方、「Glavenir」はそれぞれ6.4℃、5.3℃となり、温度差はわずか1.1℃。ほぼ熱が漏れていないことがわかる。この実験により、「Glavenir」を採用すると消費電力が約17%改善することが分かった。

 さらに冷凍ショーケースに使うとどうなるか。コンビニやスーパーにはガラス扉の冷凍ショーケースがあり、一般に断熱性能に優れるトリプルガラスが使われている。外側のガラスには結露防止ヒーターが取り付けられ、扉の開閉時にガラスが結露するのを防いでいる。