1枚の扉につき消費電力量はおよそ64Wh。これを1年間に換算すると560kWhほどの消費電力量となり、金額にして年1万5120円のコストになる。1店舗に20枚の扉があるとすると、年間30万円ほどの電気代が結露防止ヒーターに使われていることになる。

 トリプルガラスの代わりに断熱性能に優れる「Glavenir」を採用すると結露の問題がなくなるため、ヒーターは不要になり、年間30万円ほどの電気代が浮く。

 「Glavenir」に使われている材料は鉛を含まず無機材料がメインのためリサイクルもしやすいのがメリットだ。環境保全性や安全性を考慮した設計になっている。

ボリュームゾーンは建築分野

 断熱性能に優れ、薄くて軽量な真空断熱ガラス「Glavenir」。その用途は、コンビニやスーパーなどの冷凍・冷蔵ショーケース、家電製品、住宅などの建築、自動車や電車といったモビリティが期待される。

 「最大のボリュームゾーンは建築分野。次いで冷凍・冷蔵ショーケースと考えている」と木村氏は語り、こう続ける。「目指しているビジネスモデルはライセンスビジネス。ガラスの販売を数多く手がけているパートナー企業と組んで、粛々と技術を展開していきたい」。

■ Glavenirの市場性
冷凍・冷蔵ショーケースや家電などを皮切りに、各業界のパートナーと連携して市場拡大を目指す
(図版提供:パナソニック)

 住宅の断熱化で最先端を走っているのは省エネ、脱炭素に積極的な欧州だ。真空断熱ガラスの最大の市場は欧州になると考え、パナソニックとAGCは欧州市場向けにライセンス生産することで合意した。AGCのベルギー工場に新たな生産ラインを導入し、販売を開始している。両社は欧州の冷蔵・冷凍ショーケース市場でも協業を模索する。そして、欧州市場で「圧倒的な普及率を目指す」(木村氏)という。

 住宅のリビングに使われるサッシに対応できるように、強化ガラス仕様の最大サイズは長さ2540mm×幅1600mmまでそろえている。

 住宅の窓ガラスに使用した場合、どれだけの省エネ効果が期待できるか。一般に窓からの熱ロスは住宅の中で使われるエネルギーの約半分を占めると言われる。従来の1枚ガラスを「Glavenir」に替えると、窓ガラスからの熱ロスは10分の1から8分の1に抑えられるという。

 「そうした省エネ効果はもちろん大きいが、何よりも窓の近くで感じる何とも言えない底冷え、冷輻射というものがなくなり、快適性が著しく改善される」と木村氏は住宅用途でのメリットについて説明する。

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パナソニックの群馬工場では事務所棟の2階窓ガラス(180㎡相当分)を真空断熱ガラス「Glavenir」に交換。今後、省エネなどに関するデータを取得する予定
(写真提供:パナソニック)

「ガラスの未来」に期待

 一方で課題もある。現状の価格はトリプルガラスと同程度かやや高い。一般住宅向けに使われているのは2枚構成の複層ガラスで、それに比べると「Glavenir」は2倍以上する。断熱性能は約3~5倍優れるとはいえ、価格差は決して小さくない。

 曲面に加工したり、より大きなサイズにしたりするのも課題だ。自動車向けには曲面のガラスが求められるし、コスト意識もより厳しくなる。ビル用窓ガラスにはより大きなサイズが必要になる。

 パナソニックは「環境ビジョン2050」を17年6月に策定し、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向けた社会づくりを目指す。同ビジョンでは、50年までに「使うエネルギー」よりも「創るエネルギー」の方を多くしていくとしている。環境経営推進部主務の佐々木秀樹氏は、「Glavenirは住宅での省エネを図ることで、使うエネルギーを減らすことに貢献できる。カーボンニュートラルが期待される中、日本の住宅における断熱性能は改善の余地があり、Glavenirは大きく貢献できるポテンシャルを持っていると考える」と語る。

■ パナソニック環境ビジョン2050
「パナソニック環境ビジョン2050」を17年6月に策定。50年までに「使うエネルギー」よりも「創るエネルギー」を多くすることを目指す
(図版提供:パナソニック)

 「Glavenir」という名称は英語でガラスを表すGlassと、フランス語で未来を表すAvenirを掛け合わせた造語である。優れた断熱性能があり、薄くて軽くリサイクルもしやすい特長により、その「ガラスの未来」に期待が膨らむ。