温室効果ガス削減に貢献する革新的な技術開発と社会実装に向けた取り組みを進める。社内外の連携によってバイオマス利活用とカーボンリサイクルの実用化に弾みをつける構えだ。

 出光興産は燃料油を柱に、石油化学や原油・石炭開発などの事業を展開するエネルギー企業である。2019年に昭和シェル石油との経営統合後、初めての中期経営計画を発表した。

 22年度までの中計では、50年までの事業環境シナリオを複数想定した上で、30年のありたい姿を描き、 2つの基本方針を掲げた。

 1つは「レジリエントな事業ポートフォリオの実現」で、収益基盤事業の構造改革、成長事業の拡大と次世代事業の創出を重点課題に据えた。もう1つは「社会の要請に適応したビジネスプラットフォームの構築」で、温室効果ガス削減などの取り組みを進める。

 温室効果ガス削減目標は30年度で17年度比15%としたが、コロナによる環境変化を受けて見直し、50年カーボンニュートラル挑戦に向けた計画を21年春に公表する予定だ。

 こうした中、出光興産ではエネルギーを安定的に供給しつつ、温室効果ガス削減に取り組んでいくには技術が重要になると判断、20年4月に技術戦略室を設立した。

 「目標は温室効果ガス削減に向けた技術開発を進め、技術戦略を立てて、全社戦略に反映させることにある。技術的視点での事業の共創推進をビジョンに掲げ、成長事業の拡大と次世代事業の創出をミッションにしている。これを社内連携と外部とのオープンイノベーションの推進とで実現していく」と技術戦略室室長の高橋あゆみ氏は語る。

バイオマス燃料の供給を拡大

 次世代事業の創出で大きなテーマにしているのが革新的技術の開発と社会実装で、中心はCO2排出削減のためのバイオマス利活用と、CO2利活用のためのカーボンリサイクル施策である。

 出光興産と昭和シェル石油では、20年以上前からバイオ燃料の開発に取り組んできた。現在のバイオ燃料の主流はバイオエタノールとバイオディーゼルで、バイオエタノールはサトウキビやコーン、バイオディーゼルは植物油や廃食油から作られるが、現在、出光興産は、食糧と競合しないセカンドジェネレーションと呼ばれるバイオ燃料の開発に取り組んでいる。

 また、石炭火力発電所において進めている、石炭と混焼することでCO2排出削減が可能なブラックペレットの開発も進めている。

 「ブラックぺレットとは、木材を粉砕・乾燥して焙煎処理し、半炭化したもので、従来のホワイトペレットに比べて、耐水性・粉砕性などに優れ、石炭と同様に取り扱うことができる。そのため、既存設備を改造せずに石炭の使用量を減らすことが可能だ」と高橋氏は特徴を説明する。実際に山口県周南市の徳山事業所の石炭ボイラーでブラックペレットの20%試験混焼を実現した。

 海外での展開も加速している。タイに建設したブラックペレットのデモプラントに加えて、20年にベトナムにサンプル製造用のプラントを建設。オーストラリアではエンシャム石炭鉱山の遊休地を活用し、生育に適した植物ソルガムの植生とブラックペレット化の実証試験を開始した。今後、商業生産開始に向けた準備を進めるとともに、鉱山インフラを活用したバイオマス燃料輸出事業化に向けて取り組みを進めていく。

■ ブラックペレットの開発を推進
石炭との混焼によりCO2排出削減が可能なバイオマス燃料のブラックペレット
エンシャム石炭鉱山(豪)でブラックペレットの原料となる「ソルガム」の植生試験を行っている
(出所:出光興産)