2021年度に事業戦略とサステナビリティを同期化する戦略会議を設置した。新しいマテリアリティを経営の軸に据え、事業ポートフォリオの拡充を急ぐ。

 コスモエネルギーホールディングスは日々の生活に欠かせない総合エネルギー企業として、早い時期から環境経営に取り組んできた。1994年に地球環境委員会を立ち上げ、2001年には環境報告書を初めて発行、現在の桐山浩社長が初代室長を務める環境室を設置した。その後、地球環境委員会は環境・社会貢献委員会に進化し、その他の委員会と共に内部統制関連委員会として、環境問題にとどまらず、社会からの要請に応える活動をしてきた。

 その一方で、19年頃からサステナビリティへの社会の関心が高まるとともに、社内でも課題解決に取り組もうという議論が活発になってきた。そこで、事業戦略と整合性を取りながら、社会の課題解決に取り組もうと、20年4月にサステナビリティ推進部を設置した。 

 「最初に、サステナビリティ経営が実践できているとはどういう状態なのか、どのように制度設計を行ない経営の骨組みを作ればよいのかを議論した。それを『サステナビリティ経営のあるべき姿』として、9項目にまとめた」とサステナビリティ推進部長の高木勢伊子執行役員は話す。

財務・非財務を同期化する

 サステナビリティを経営の基盤にすべく、経営層で議論を重ね、21年4月、財務と非財務の目標を一体化させるため、新たな意思決定機関としてサステナビリティ戦略会議を新設した。議長にホールディングスの社長執行役員が就任し、ホールディングスの執行役員や監査等委員、中核事業会社の社長と企画部門長がメンバーとして、ホールディングスの社外取締役がオブザーバーとして参加する。

 サステナビリティ戦略会議は取締役会の下に、経営執行会議と並んで設置される。以前は経営執行会議だけだったので、経済活動に重きを置いた議論が中心だったが、21年度からは対等の立場でESGについての議論が可能となった。議論の場は2つに分かれるが、最終的には取締役会で財務と非財務を同期化し、意思決定するサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の体制が整備された。

 サステナビリティ戦略会議は年3回の開催を予定したが、21年度は合計8回の開催となった。そこでの議題は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同、カーボンネットゼロに向けたロードマップ、非財務の目標(KPI)設定や進捗管理、リスクマネジメントの他、人権方針や環境方針の決定、コーポレートガバナンス・コード改訂への対応など多岐にわたった。

マテリアリティを新たに特定

 21年3月には、目指すべき50年の社会に向け、社会とコスモエネルギーグループの持続的な発展と中長期的な企業価値に影響を与える最重要課題(マテリアリティ)を新たに特定した。

 現在、18年度から22年度までの第6次連結中期経営計画と連動するかたちで、連結中期サステナビリティ計画を実行中だ。計画を策定した17年にもマテリアリティを特定していたが、この数年でサステナビリティの重要性が高まり、経営環境も大きく変化したことから、見直しを行ったのだ。「サステナビリティ経営のあるべき姿」の9項目の中にも、マテリアリティの特定に関する要諦が示されている。

 「1つは重要度が経営陣に議論されて正しいプロセスで特定されていること、もう1つは事業戦略の方向性や新規事業を考える時にマテリアリティが起点になること。この2つを具現化することが刷新の狙いだ」と高木氏は説明する。

 マテリアリティを特定するために、まずGRIスタンダードの33トピックをベースに、SDGsやDJSI、FTSE、MSCIなどのESG評価指標の中からエネルギー業界特有のテーマと課題を抽出したほか、業界の取り組みテーマからも課題を抽出し、41項目に絞り込んだ。これを基に、自社にとっての重要度を横軸に、社会にとっての重要度を縦軸に取り、マテリアリティ・マトリックスを作成した。縦軸の社会から見た重要度では、格付け機関、生活者調査、従業員アンケート、投資家ヒアリング、有識者との対話などを集計して特定した。一方、横軸の自社にとっての重要度は、ホールディングスの取締役が参加してワークショップを実施し、最終的に取締役会でマテリアリティを決定した。

■ コスモエネルギーグループのマテリアリティ特定のプロセス
■ コスモエネルギーグループのマテリアリティ特定のプロセス
マテリアリティの特定では、まずエネルギー業界に求められる取り組みテーマなどから154の課題候補を抽出、さらに統合して41項目に集約した。これを基に、自社にとっての重要度を横軸に、社会にとっての重要度を縦軸にしたマテリアリティ・マトリックスを作成し、右上にくる10項目を最重要マテリアリティとして特定した。これを取締役会で決裁し、事業計画・中計に落とし込んで、PDCA/見直しを実施していく
(出所:コスモエネルギーホールディングス)
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