レモンを通じた地域との共創

 ポッカサッポロフード&ビバレッジが、近年とくに力を入れているのが、国産レモンの栽培を通じた「地域共創」の活動である。現在、レモンが注目を浴びているとはいえ、そのほとんどは海外産だ。同社が現在扱っているレモンのうち、国産レモンの割合は1割に満たないという。農林水産省のデータによれば、国内のレモン生産量は約8000tにとどまり、これは国産みかんの100分の1程度にすぎない。そこで同社では、地域やレモン農家に寄り添った活動体制を整え、持続可能な国産レモンの生産振興を目指している。

 13年2月には、国産レモン生産量の約6割を占める広島県とパートナーシップ協定を締結した。広島県はレモンの生産拡大に積極的で、近い将来、県内だけで1万tの生産を目標としている。

 16年4月には、瀬戸内海に浮かぶレモンの一大産地である広島県の大崎上島町との包括協定を締結しており、地元のレモン農家との交流や情報交換を進めている。

 実は、国産レモンの需要が高まるとともに、過去20年で収穫量は約4倍、出荷量は約3倍以上に増えているが、供給が追いついていないのが実情だ。レモンの栽培に適した温暖な土地が国内で限られていることもある。

 だが、何よりも大きな原因として、第1次産業に共通した悩みである農業就業人口の減少、高齢化・後継者不足、不安定な収入、耕作放棄地が増えることによる土地の荒廃などが挙げられる。

 こうした課題解決に向けた具体的な方策の1つとして、19年4月、大崎上島において広さ50aの自社畑でレモン栽培を開始した。

瀬戸内海の離島 大崎上島で行っているレモン栽培<br><span class="fontSizeS">(写真提供:ポッカサッポロフード&ビバレッジ)</span>
瀬戸内海の離島 大崎上島で行っているレモン栽培
(写真提供:ポッカサッポロフード&ビバレッジ)

 「食に携わる以上、食を生み出す産地を知らずして、食を語ることはできない。地域に密着した活動を行ってきたことで、農家の方々が一人ひとりいろいろな思いをもって経営していることを学んだ」(土屋氏)

 同年10月には、大崎上島の空き家を活用してサテライトオフィスを開き、社員2人が定期的に滞在している。さらに、20年には耕作放棄地を再生利用するための実態調査を、広島大学と共同で開始した。

社会課題解決が企業の利益に

 ポッカサッポロフード&ビバレッジによる持続可能な国産レモン栽培への取り組みは、まだ始まったばかりである。今後は、持続可能なレモン産業をベースにした大崎上島の地域振興、レモンの島としてのブランド化、健康な町づくりの推進など、地域住民とのコミュニケーションを強化しながら、長期的な視点での活動を行っていくという。

 「規模は大きくなくても、レモン栽培を通じて地域経済が潤うといった循環モデルを作ることで、地域の人たちが幸せに感じられることが、何よりも大事と思っている」と土屋氏は今後の展望を語る。

 近年では、ESG経営の視点からサステナビリティの考え方が浸透してきたものの、まだまだ日本では社会課題解決は利益につながらないという認識をもつ経営者が少なくない。しかし欧米では、企業が社会に貢献している姿は非財務指標として高く評価されている。

 同社では小児がん患者への支援を目的に、商品の売り上げの一部を一般社団法人レモネードスタンド普及協会に寄付するという社会貢献活動も行っている。

 人口減少、高齢化が進むわが国において、企業が地域に入って社会課題を解決することは、会社にとっても社会にとっても重要だと考えており、レモン事業を通じて市場をリードしていきたい考えだ。