平城京の南端に当たる地に、最先端の技術による世界水準のサステナブルな建築が出現した。「風、太陽、水」を生かして環境に配慮するとともに、地域との活発な共創活動を目指す。

 大和ハウスグループでは環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」に基づき、「環境負荷ゼロ」の実現を目指している。その一端として、2021年10月、あらゆる世代が集い、共に学び、成長する場として奈良市内に「みらい価値共創センター」を創設した。その愛称である「コトクリエ」は、「古都」「個と」「子と」に加え、「コト」を共に創造していくという意味で、「共創=コ・クリエーション」にかけた造語である。

 コトクリエは、その優美な外観もさることながら、内部にはSDGsを意識したコンセプトを取り入れ、コミュニケーションやつながりを重視した仕掛けなど、人がその能力をいかんなく発揮できる工夫が凝らされている。

■ 「みらい価値共創センター」外観
■ 「みらい価値共創センター」外観
外観はメビウスの輪とDNAの二重らせんをモチーフに設計されており、植栽が彩る景観を重視して、外周には万葉集の歌に詠まれた植栽が植えられている
(出所:大和ハウス工業)

誰もが心地よく過ごせる場所

 コトクリエのベースにあるのが、「何をしたら儲かるかではなく、どういう商品が、どういう事業が世の中のためになるかを考えよ」という大和ハウスグループの創業精神である。そして、実際の設計に当たってコンセプトとしたのが、室町時代の「会所」だ。会所とは、身分を超えた多様な人が集い議論を交わすことで、新しい文化や学びを発信していった場所だ。

 「創業以来、これまで守ってきた大和ハウスグループのDNAを受け継ぐとともに、単にグループ社員のための研修の場にとどまらず、地域の人々に活用していただき、社会貢献できる場所として、令和の『会所』を目指した」と、人財・組織開発部 みらい価値共創センター長の池端正一氏は話す。

 様々な背景をもつ人々が集うには、誰もが心地よく過ごせる場所でなくてはならない。そのために導入された特徴的な設備が、オールジェンダートイレや授乳室、祈祷(きとう)室である。

 オールジェンダートイレは、性的少数者(LGBTQ)をはじめ多様な利用者に配慮したトイレで、シンプルな入り口内装とサイン、そして動線に大きな特徴がある。入り口の先には男女共用の通路があり、その通路に沿って誰でも使えるオールジェンダーの個室が並ぶ。個室を利用したら入り口から出てきても構わないし、入り口とは別に設けられた出口を使うことで誰にも会わずに退室もできる。

 日本では珍しい設計だが、トランスジェンダーの当事者からネーミングをはじめ高い評価を受け、一般の見学者にも好評だという。オールジェンダーの個室の向かいには、片側の半身がまひした人のために、左半身が使える人、右半身が使える人用の個室がそれぞれ用意されている。