サッポロホールディングスは、気候変動に対応可能な原料の開発を加速させている。創業当時からの育種技術により、持続可能な原料調達と自然共生社会の実現を目指す。

 サッポロホールディングスは、2019年に策定した「サッポログループ環境ビジョン2050」の下、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」という3つの社会の実現に向けた取り組みを推進している。

 50年に向けた環境ビジョンでは、「自社拠点でのCO₂排出量ゼロ」「自社拠点以外のバリューチェーンにおけるCO₂排出量の削減」「グループ全体で3Rに努めて循環型社会に対応した容器包装を100%使用」といった目標を掲げる。

 なかでも、「生物多様性の保全」を基本方針とする自然共生社会の取り組みに、サッポログループの独自性が際立つ。2つの目標のうち、「大麦・ホップの研究開発を通じた持続可能な調達」は、ビール原料の育種・品種改良といった形で実現を目指す。もう1つの「持続的に自然と共生できる豊かな時間と空間を感じるまちづくり」については、同グループの不動産事業の恵比寿ガーデンプレイス内に設置された農園などが実現に向けた第一歩となる。

■ サッポログループ「環境ビジョン2050」
■ サッポログループ「環境ビジョン2050」
「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けて、それぞれに2050年目標を策定した
(出所:サッポロホールディングス)

「育種」で気候変動に対応

 サッポログループは、環境ビジョン策定と同じ19年に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明している。気候変動への対応としては、環境ビジョンに定めた脱炭素の取り組みを強化してCO₂排出を抑制する「緩和」と、ビール原料作りの取り組みにより気候変動の被害を回避・軽減する「適応」の両面から挑む。

■ 気候変動への緩和と適応
■ 気候変動への緩和と適応
グループ全体での徹底した脱炭素への取り組みによる「緩和」、ビール事業で培ってきた環境に適応する原料作り技術による「適応」の両面から課題解決に挑む
(出所:サッポロホールディングス)

 同グループの基軸であるビール事業では、1876年の創業以来140年以上にわたってビールの主原料の育種を行なってきた歴史がある。そうして培ってきた育種の技術を生かし、気候変動に対応可能な特性を持つ大麦とホップを開発する。

 経営企画部サステナビリティグループシニアマネージャーの渥美亮氏は、「そもそも育種・品種改良は、病害や気候変動など環境適応のための技術として以前から取り組んできた。この育種の適応策がTCFDの情報として開示できると考えた」と説明する。

 TCFDが求めるシナリオ分析は、国連食糧農業機関(FAO)などの分析データなどを基にビール原料農産物の調達地域である欧州、北米、オセアニア、東アジアでの2050年までの収量変化を想定して行なった。その結果、異常気象による農作物の収量減少や化学肥料使用に対する規制強化、病害虫などによる品質低下といったリスクが明らかになった。

 こうしたリスクは既に顕在化している。14年の長雨の影響で大麦に穂発芽(収穫前の穂に実った種子が発芽してしまう現象)や黒カビが発生し、大麦の産地である栃木県では23億円以上もの農作物被害があったという。