森林資源と地域経済の好循環を生み出す「森林グランドサイクル」が軌道に乗り始めた。耐火集成材「燃エンウッド」などを開発し、国産材を活用した中高層木造建築の普及を加速させる。

 竹中工務店は、戦国時代に織田家の普請奉行・竹中藤兵衛正高が工匠の道に入り、神社仏閣の造営を主業としたことをルーツに持つ。同社は近年、森林資源と地域社会の持続可能な好循環を生み出す「森林グランドサイクル」 を展開している。

 森林グランドサイクルでは「木のイノベーション⇒木のまちづくり⇒森の産業創出⇒持続可能な森づくり」という一連のサイクルをコンセプトとして打ち出している。その背景には、日本の木造建築が世界から遅れつつあるという同社の危機感があった。

 国産の木材が安価な外国産材に押され、国内の林業が衰退し適切な伐採が行なわれなくなった結果、災害から地域を守るといった、森が本来持っている機能を発揮できなくなっている。

 こうした状況を林野庁も無視できなくなり、間伐を適切に行ない、森を整備するために国産材の活用を促すための施策を立て始めた。例えば、2021年10月には、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、公共の建築物から一般の建築物へ木材の利用拡大を進めている。

 竹中工務店が打ち出した森林グランドサイクルは、森林資源の確保や環境保護に加え、森と街や都市をつなぐ、という概念も含む。「これからは住宅など低層建築だけでなく、中高層建築にも木が多用されることを狙い、16年9月に木造・木質建築推進本部を立ち上げた」と同社参与で木造・木質建築統括の松崎裕之氏は語る。

■ 森林グランドサイクルのコンセプト
■ 森林グランドサイクルのコンセプト
出所:竹中工務店

 竹中工務店は、現在までに国内で10件以上の中高層木造建築を手掛けている。その中の1つ、東京都江東区の木場に木造12階建ての同社単身寮「フラッツウッズ木場」を20年2月に完成させた。この建物に「木のイノベーション⇒木のまちづくり⇒森の産業創出⇒持続可能な森づくり」といった森林グランドサイクルの実践を見ることができる。

 まず木のイノベーションでは、柱や梁(はり)となる建材として、耐火集成材「燃エンウッド」を開発した。中高層建築物に適用する木材には、地震にも耐えられる堅牢性と耐火性が必要だ。

 燃エンウッドは、柱のコア部分に集成材を使うものの、その周囲に熱を吸収するモルタルや石こうを用いることで燃焼を止め、最外層には火災時に炭化する燃え代を形成している。

 柱の中心部である荷重支持部では260℃に到達しないので、火災が発生しても荷重支持部が燃えることはないという。例えば、最大945℃で1時間加熱しても柱は燃え落ちることなく、建物の倒壊を防ぐ。