「タイヤを半分の重さにする」のは、チャレンジングな取り組みだ。

 ゴムの量が多いのは路面に接する「トレッド部」だ。まずはこの薄肉化が必要だが、薄くすると溝が浅くなるためウェットグリップ性能の低下につながり、さらには摩耗寿命も短くなる。桑島雅俊研究開発部長は「これらを防ぐため、ゴムの配合やトレッドパターンなどを見直しウェットグリップ性能と摩耗を高いレベルで保つ」と説明する。

 ほかに、通常はスチールコードを使うベルト材を、高剛性の有機繊維に替えるなどして軽量化する。タイヤの側面(サイド部)も軽量化するが、縁石などに接触した時の耐外傷性が求められるためタイヤ形状を工夫する。ホイールとタイヤを結合させる部分である「ビード部」の軽量化も必要だ。この部分の構造を全面的に見直し、軽量化する。タイヤの骨格である「カーカス」も高強度の繊維を用いてできるだけ薄くする。

■ 超軽量化コンセプトタイヤの軽量化へのアプローチ
■ 超軽量化コンセプトタイヤの軽量化へのアプローチ
2019年の東京モーターショーで公開されたコンセプトタイヤ。約50%の軽量化を目指し、省資源化と低燃費化を追求する
(画像提供:横浜ゴム)

 さらに、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能の両立に欠かせないのがシリカの配合技術だ。一般にシリカをゴムに多く配合するほどウェットグリップ性能は高まる。しかし、ケイ素の酸化物であるシリカは、ゴムの油にはなじみにくく、たくさん配合するのは難しい。このため横浜ゴムは独自に、混合機を開発して採用するなど、最適なコンパウンド(混合物)の実現を追求している。

 横浜ゴムの基本理念に「心と技術を込めたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」とあるように、技術へのこだわりは強い。一例を挙げると、理化学研究所が包括運営する大型放射光施設「Spring-8」を利用したシリカ配合の解析がある。世界最高クラスの放射光を使い、シリカを配合したゴムの内部構造をナノレベルで詳細に分析するという高度な研究も行っている。

 新規材料の開発、コンピューターシミュレーションによる形状最適化、そして最先端の研究など様々な研究開発力を駆使してコンセプトタイヤの開発は進められている。

 そして、コンセプトタイヤの研究開発で培われた技術やノウハウが今後の市販タイヤに生かされる。「新たに得られた要素技術を、製品に適用できるものから順次盛り込んでいく」と、桑島研究開発部長は話す。

「なくてはならない企業」目指す

 経済産業省は2020年12月25日に「グリーン成長戦略」を策定し、30年代半ばまでに乗用車の新車販売を100%電動車とするとした。桑島研究開発部長は、「クルマの電動化は待ったなしだがタイヤに求められる性能が大きく変わるわけではない。軽量化を軸に電動化への対応を続ける」と話す。電気自動車は走行時の音が静かであることが特徴のため、タイヤも一層の静粛性能が求められている。多様な機能を高いレベルで実現するタイヤ開発が必要になる。

 また、タイヤ生産では資源使用量を減らしながらも、安定的に調達する必要がある。原料となる天然ゴムがゴム農園で持続的に生産されるように、横浜ゴムはタイの天然ゴム公社や取引先と協力して勉強会や肥料提供、アグロフォレストリーの支援を行っている。

 「事業活動を通じてSDGs達成を目指していけば、自ずと社会課題の解決にもつながる。本業を通じて継続的に社会に貢献することが重要だ」と長谷川CSR本部長代理兼CSR企画室長は語る。横浜ゴムは、「なくてはならない企業」として、事業活動を通じて地球と社会の豊かさに貢献していく考えだ。