建設業で培った技術的ノウハウやマネジメント力で新規事業を創出する。2050年に向けて、水素活用を核としたスマートエネルギー社会の実現を目指す。

 総合建設会社の大林組が、未来社会における水素サプライチェーンの構築に向けて、水素製造の実証実験、水素発電や水素ステーションの建設などの事業に取り組んでいる。

 2020年10月、政府は「50年カーボンニュートラル」による脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。大林組は50年に向けて、水素活用を核としたスマートエネルギー社会の実現に貢献していく。

 次世代エネルギーとして期待される水素は、利用段階でCO2を排出しないクリーンなエネルギーだ。大容量の貯蔵が可能で運びやすい柔軟な2次エネルギーという特徴があり、燃料電池(FCV)や水素発電の分野で研究開発が進んでいる。特に再生可能エネルギーを利用して水を電気分解する方法で製造する「グリーン水素」は、環境負荷の低減やエネルギー自給率の向上という観点で注目されている。

課題の多い水素エネルギー

 日本は安定供給が可能なエネルギー資源に乏しい。地球温暖化の要因となるCO2を削減するためには、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を減らし、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーや、水素などの代替エネルギーの利用拡大に取り組まざるを得ない。

 水素エネルギーは次世代エネルギーの柱の1つとして期待されているものの、本格利用に向けては技術的、経済的課題が多い。産官学が連携して様々な水素利用のスキームの開発と実証を進めていく必要がある。

■ 水素の多様な製造方法とグリーン水素代替の可能性
■ 水素の多様な製造方法とグリーン水素代替の可能性
出所:経済産業省「第6回CO2フリー水素WG」(平成28年11月24日事務局提出資料)
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 大林組技術本部スマートエネルギーソリューション部部長の島潔氏は、「水素エネルギーの商用化は、液化天然ガス(LNG)の商用化の過程が参考になる」と話す。

 天然ガスは、石油や石炭など他の化石燃料と比較して環境性で優位にあり、CO2排出量では石炭の40%、石油の25%の削減効果がある。

 現在、日本のエネルギー消費の大部分を占める海外産の天然ガスは、生産国で液化され、LNGとして輸入されている。LNGの輸送技術が確立したのは1954年だが、日本は69年に最初にLNGを輸入した。導入まで実に15年のリードタイムがあった。

 当初、LNGの熱量当たりの価格は原油より割高だったが、エネルギー課税などの税制優遇や石油危機により、LNGは石油より経済性で優位なエネルギーになった。「同様に水素も、税制優遇やカーボンプライシング(CO2排出量に応じて価格を付ける施策)、排出規制などによって他のエネルギーに対して競争力が高まり、商業ベースに乗る可能性がある」と島氏は期待を込める。