課題は、搾油工場のその先、農園や小規模農家までのトレーサビリティだ。「小規模農家は何十万軒とあり、網の目のようにサプライチェーンが広がっているため、トレーサビリティを高めるのが非常に難しい」と、執行役員 油脂・チョコレート事業部門長の科野裕史氏は説明する。

 トレーサビリティの向上はサプライチェーンの改善と表裏一体の関係にある。2つのアプローチで改善に挑んでいる。

 1つ目が、KPIに掲げたように、マレーシアの主要グループ会社「パルマジュ エディブル オイル」が全サプライヤーに対して労働環境改善プログラムを適用するというもので、農園調査や、搾油工場との1対1のエンゲージメントを行っていく。

 もう1つは、不二製油が直接取引する約20社の「直接サプライヤー」とのエンゲージメントを確立し、改善とリスク低減を行うというもの。

 こうしたアプローチに加えて、実効性が期待されるのが、「グリーバンス(苦情処理)メカニズム」だ。環境・人権問題は農園で発生する場合が多く、被害者やその声を代弁するNGO(非政府組織)などステークホルダーからの苦情をWEB(英語)で受け付ける。

 「苦情の内容が当社の責任あるパーム油調達方針に照らし合わせて問題と判断された場合、グリーバンスリストに登録し、直接サプライヤーに改善をお願いするのが基本的な対応になる」と、ESG経営グループCSRチームの山田瑶氏は話す。

■ 苦情処理メカニズム「グリーバンス」の仕組み
■ 苦情処理メカニズム「グリーバンス」の仕組み
不二製油のパーム油サプライチェーン上の人権問題や環境問題を受け付け、改善するための仕組み。直接サプライヤーへの働きかけ(エンゲージメント)が基本的対応であり、対応の進捗状況を不二製油のウェブサイトで公表している
(出所:不二製油)
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 苦情処理メカニズムは国連人権理事会が11年に承認した「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく実効的な救済手段だ。20年6月時点で、不二製油が問題を確認したグリーバンスは108件。その90%で取引先による改善が行われ、残り10%は改善が見られないなどの理由で取引停止となった。

RSPO認証を増やし高付加価値化

 サステナブル調達では、認証油の調達量を増やすことも有力な方法だ。不二製油の子会社「フジオイルアジア」は17年11月、マレーシアのパームヤシ栽培会社「ユナイテッド プランテーション」と合弁会社「ユニフジ」を設立した。

 ユナイテッド プランテーションは1906年創業の歴史ある農園会社である。マレーシアに本部を置く国際NPO(非営利組織)「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)」の認証油を世界で初めて生産するなど、持続可能なパーム油の生産に強みがある。

 ユニフジは同社の敷地内でRSPO認証のパーム油を確保し、不二製油の強みである分別技術を使って高品質なパーム油製品を生産している。その際、パーム殻を使ったバイオマスエネルギーを生産プロセスに活用し、環境にも配慮している。

■ 高品質なパーム油を確保するユニフジ
■ 高品質なパーム油を確保するユニフジ
ユニフジは、ユナイテッド プランテーション社(マレーシア)の広大なパーム農園の一角にある
(出所:不二製油)