コロナ禍での三密回避のため、人の移動をつかむことが大きな課題になっている。モバイル空間統計は感染拡大防止、防災、観光振興などに大きな力を発揮する。

 新型コロナの感染拡大の中で、繁華街やターミナル駅などでの人の流れ(人流)が、行動変容を測る指標のひとつになっている。そこで大きな力を発揮しているのが、NTTドコモの「モバイル空間統計」だ。

 2020年5月27日からこの技術を利用した「モバイル空間統計 人口マップ」を無料で公開している。誰でもスマートフォンやパソコンなどからアクセスでき、最短1時間前までの全国の人口分布を500m四方ごとに見ることができる。 

 「コロナ禍で人の移動に注目が集まり、人との接触を避けることが社会的な課題になった。その状況に役立てようと、20年4月の緊急事態宣言直前に開発を始め、1カ月ほどでリリースした。5、6月頃は1日最大20万人ほどに利用していただいた」とドコモ・インサイトマーケティング エリアマーケティング部副部長の森亮太氏は語る。

24時間365日人口推計が可能

 「モバイル空間統計」は、「いつ」「どんな人が」「どこから」「どこに」動いたかがわかる新たな人口統計として、13年にサービスを開始した。サンプルは、NTTドコモの法人以外の契約者の約8000万台(20年3月時点)、訪日外国人の約4割に当たる1200万台(19年実績)、合計9200万台の携帯電話から取得している。電源が入っている状態であれば収集できる位置情報のデータに基づいて人口を推計する。

 サンプルサイズが大きいことから統計的信頼性が高いのが特長で、1時間単位で24時間365日、日本全国の人口推計ができる。しかも性別や年代、居住地などの属性も分かる。

 「各エリアにどの属性の人がどれくらいいるのかを把握することができる。さらに居住地の情報を活用することで、流入人口と流出人口を分けて調査することも可能だ。例えば、平日と休日では、午後2時に丸の内エリアにいる人の居住地にどんな違いがあるかが分かる。また、それとは逆に、例えば、横浜市都筑区に居住する人が平日と休日の午後2時にどこに外出しているか、といった比較分析ができる」と、同じくエリアマーケティング部の斧田佳純氏は説明する。

■ モバイル空間統計人口マップ
2020年9月23日夕方の大手町駅周辺の人出の前年比、性別、居住地別比較
https://mobakumap.jp
(出所:NTTドコモ)
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 「モバイル空間統計」はコロナ禍において、国や自治体などの人流対策に大きく貢献している。例えば、20年4月の緊急事態宣言の発令によって、同年のゴールデンウイークの東京都民の外出が前年に比べ9割近く減少したことを明らかにした。現在も日々、全国の主要エリアの混雑状況を分析しており、結果は内閣官房のコロナ対策サイトで公開中だ。

 モバイル空間統計の活用分野は幅広く、防災計画、まちづくり、観光振興、店舗開発、販促支援など多岐にわたる。

 防災では、18年9月6日に起きた北海道胆振東部地震で、発生当日と同じ木曜日の前月8月9日を比較すると、札幌駅周辺の人口が激減、平時とは異なって、集中エリアが複数に分散していることが読み取れる。

 また24時間365日の被害想定が可能なため、防災計画策定の基礎データとして使える。例えば埼玉県で地震が発生した場合、県内全域の帰宅困難者の推計は74万7000人、そのうち大宮駅周辺は3万4000人、千代田区内にいる県民は11万人と推定される。これを基に食料・飲料水・毛布などの備蓄場所と必要量、一時滞在施設の必要数、徒歩帰宅ルートの整備など様々な対策を策定することが可能になる。