コロナ禍で「ヤクルトレディ」による訪問販売のスタイルを変革、非対面・非接触での宅配を強化する。ベトナムでは「ヤクルト」の無償提供や手洗い場の設置など、地域社会への貢献活動を加速している。

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、ビジネススタイルの変革を余儀なくされる企業は多い。ヤクルトグループもそんな企業の1つ。同社は、「ヤクルトレディ」と名付けた販売員が消費者宅に直接商品を届ける宅配モデルを取ることに特徴がある。現在、ヤクルトレディと店頭・自販機の売り上げはほぼ半々だ。

 ヤクルトレディは単に商品を販売するだけでなく、乳酸菌や腸の働きに関する知識を備え、地域の人々の健康維持・増進をサポートする役割を担う。同社のESG経営やSDGsへの貢献の核となる存在と言える。

 だが、感染リスクがあるコロナ禍では、対面・接触を基本とするヤクルトレディも従来の活動を修正せざるを得なくなった。

「ヤクルト届けてネット」強化

 新型コロナウイルス感染症の拡大が始まった2020年2月、ヤクルト本社は「新型コロナウイルス総合対策本部」(本部長:根岸孝成代表取締役社長)を設置した。グループ全体で感染防止を図り、安全かつ安定的な事業活動を継続するための対策を検討し、実行する体制とした。

 最優先したのは国内外のヤクルトグループ従事者とその家族、顧客の安全確保である。まずはヤクルトレディが「安全・安心」な宅配ができるよう、基本的な感染防止対策を講じた。国内では、ヤクルトレディの専用サイト「あんぜん・あんしんクリニック」にコロナ対策のチェック項目を追加した。検温、手洗い、手指の消毒、宅配用具の清掃・消毒やマスク着用、対面時間の短縮などを指示する。

 ただ、感染対策を徹底しても、「ヤクルトレディと直接接するのを控えたい」と考える顧客もいる。そこでヤクルト本社は、17年10月にスタートしていた「ヤクルト届けてネット」での受注を強化する体制を整えた。「ヤクルト届けてネット」は、インターネットで注文ができる。クレジットカードでの決済が可能なため、対面時間が減り、お金に触れる必要もなくなる。ヤクルトレディは顧客の家を訪ねた際、「ヤクルト届けてネット」の存在を伝え、利用を促した。

 商品の手渡しを好まない顧客向けに、蓄冷材と商品を入れる「保冷受箱」を活用した。届けてネットと保冷受箱を組み合わせることで、ヤクルトレディと顧客とが直接接触することなく商品を届けられる仕組みを整えたのである。

■ ヤクルトレディの活動
商品販売のほか、健康アドバイザーの役割を担うヤクルトレディ
コロナ禍での非対面・非接触の商品受け渡しが可能な保冷受箱
(出所:ヤクルト本社)

 感染対策の観点から非対面・非接触の宅配を実現したが、このままでは顧客との接点を持ちにくく、これまで担ってきた健康情報の提供などが難しくなる。そこで同社は、情報発信のツールを多様に拡充した。

 その1つが、宅配時に配布する情報誌「♯よむヤクルト」である。乳製品の情報やレシピなど健康な生活に役立つ情報のほか、化粧品部門とも連携し、マスク着用時のメイク方法や肌荒れ対策なども掲載するもので、これまでに第2巻まで発行した。