緑茶飲料の需要の高まりを受け、茶葉を安定的に調達するため茶産地育成に取り組んでいる。飲料生産工場から出る茶殻は、高付加価値製品を開発し、アップサイクルを進めている。

 消費者の健康志向などを背景に、緑茶の飲料市場は2009年の約3800億円から19年には4450億円と17%伸びた。その緑茶飲料市場で33%とトップシェアを誇るのが伊藤園だ。ラベルで新俳句大賞の作品を紹介しているお馴染みの商品「お〜いお茶」は、茶系飲料のNo.1ブランドとして知られる。

 1989年に市場に投入した「お〜いお茶」は、緑茶は急須に入れて飲むというイメージを覆し、缶やペットボトルで提供して、人々に親しまれるようになった。「お〜いお茶」に使用されている茶葉は100%国産である。

 しかし、緑茶飲料需要が伸びるにつれ、2つの課題が浮かび上がった。1つは、茶葉を生産する国内農家が減少する中、高品質な原料の安定的な調達を図るのが難しくなること。もう1つは、生産量が増えると茶系飲料の製造工程で排出される茶殻が多くなり、そのリサイクルをどうするかだ。

2000haの茶園確保、前倒しで達成

 1点目の生産農家の減少については深刻だ。農林水産省「農林業センサス」によれば、全国の茶農家数は2005年の約5万3000戸から15年には約2万戸へと激減し、今も減少が続いている。

 原料の安定調達を図るため、伊藤園は、既存の産地で契約栽培をしてもらい全量を買い取る方法と、耕作放棄地を活用して茶園を造成する「新産地事業」の2つの茶産地育成事業を進めている。

 新産地事業では、地元の事業者などが主体となって自治体と連携しながら茶園を造成し、伊藤園が技術指導やノウハウの提供を行う。生産された茶葉は伊藤園が買い取る。伊藤園は1976年から茶産地育成事業に取り組んでいるが、2001年から宮崎県で始めた新産地事業は、九州5県7地区に拡大し、20年8月には静岡県の袋井市でも生産を始め、全国6県8地区に拡大している。

 静岡県の生産地は山間地が多く、平地があまりない。乗用型の茶摘栽機を導入しづらく、生産効率を上げられないことから、伊藤園もこれまで参入してこなかった。しかし、「今回、袋井市が新たに造成・区画整備を進めている土地は、傾斜が少なく、乗用型の茶摘採機を導入でき、生産性を高められる。そこで地元の秋田製茶と協働して茶栽培に取り組んでいる」と伊藤園の農業技術部長の植田幸市氏は話す。

 茶産地育成事業では、環境に配慮した生産方法を採っている。食品の安全と環境保全など農業の持続性に向けた取り組みを行う農場に与えられるGAP(農業生産工程管理)認証を100%取得している。

 茶畑の茶樹はCO2を吸収・固定する。伊藤園によると、茶樹1株当たりのCO2吸収・固定量は約5kgに上り、1haの茶園で約92tを吸収・固定するという。茶産地育成事業で21年度までに2000haの茶園を確保する目標を立てていたが、その目標を1年前倒しで達成した。

おばあちゃんの知恵袋から発想

■ 茶殻リサイクルを可能にする伊藤園独自の技術
伊藤園の「茶殻リサイクルシステム」は、より付加価値の高い製品を生み出すアップサイクルを目的にしている。茶殻を配合することにより、資源の削減につながるだけでなく、茶殻の消臭抗菌・抗ウイルス効果など様々な機能性を生かしたアップサイクル製品づくりを積極的に進めている

 もう1つ力を入れて取り組んでいるのが茶殻のリサイクルだ。「お〜いお茶」は茶葉から抽出しているため、飲料工場で大量の茶殻が生じる。以前から堆肥や、飼料にリサイクルして活用していたが、2000年ごろから別のリサイクル方法の研究開発にも乗り出した。

 「今後、農業人口が減り続けることを考えると、堆肥や飼料の需要も減少する。他のリサイクル方法を研究しなければならないと考えた」と、中央研究所新素材開発課長の佐藤崇紀氏は振り返る。

 茶殻リサイクルの研究を任された佐藤氏は、祖母が茶殻を畳の上にまき、掃除していたのを思い出した。茶殻がほこりを吸着し、汚れをとる原理を利用したものだ。

 「お茶の香りがふわりと立ちのぼる思い出がよみがえった。どうせなら畳の上に茶殻をまくのではなく、畳の中に茶殻を入れればよいのではないかとアイデアを思いついた」と話す。発想の原点は「おばあちゃんの知恵袋」、そして「もったいない精神」だった。

 問題は、飲料を製造した後に出る茶殻が水分を含み、放っておくと腐ってしまうことだ。それを防ぐため、茶殻を改良し水分を含む状態でも腐りにくいように工夫した。