コットンリンターを原料とする再生セルロース繊維を通じて、CSV(共有価値の創造)ビジネスを展開する。世界有数の綿花生産国であるインドでの技術指導や教育支援で、現地産業の成長・発展を図る。

 サステナブルな繊維として注目されている素材がある。総合化学メーカーの旭化成が製造する化学繊維のキュプラ「ベンベルグ®」だ。なめらかな肌触りで独特の光沢と風合いがあり、様々なファッション製品や衣類の裏地などに使われている。

 旭化成は1928年、独ベンベルグ社が開発した技術を導入し、31年に宮崎県延岡市に工場を建設して操業を開始した。現在、世界で唯一、キュプラを生産するメーカーだ。

 世界の繊維生産量の0.02%と極めてニッチな製品のベンベルグ®は、綿糸の原料となるコットンボールの種子のうぶ毛部分、コットンリンターを原料とする。コットンリンターは綿実油を圧搾する際の副産物で、綿糸としては使われない。旭化成はその未利用繊維を独自の技術で精製・溶解して再生繊維に仕上げている。

■ コットンリンター由来のベンベルグ®
ベンベルグ®は、コットンボールの種子のうぶ毛部分であるコットンリンターを旭化成独自の技術で精製・溶解して作られる
(出所:旭化成)

 天然由来のベンベルグ®は環境負荷が少ない。生分解性を備え、夏の条件下(温度35度、湿度80%)で土に埋めると約2カ月で生地の重量が半分以下になる。繊維を燃やしても有害物質がほとんど発生しない。

 パフォーマンスプロダクツ事業本部ベンベルグ事業部長の前田栄作氏は、「業界内でベンベルグは循環性の高い環境配慮型の素材として評価されている」と話す。

■ ベンベルグ®の生分解実験
ベンベルグ®とポリエステルのシャツを土に埋めた実験。3週間後、ベンベルグ®だけが生分解されていることがわかる
(出所:旭化成)

自社の発電設備で再エネ比率4割

 旭化成は、同じくコットンリンターを原料としたキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ®」も生産している。

 ベンリーゼ®は吸液性と保液性が高く、毛羽立ちが少ないという特徴がある。接着剤を用いず、繊維の自己接着力を利用して作られるので、不純物が少ない。74年の生産開始以来、産業用(ワイパー)や美容用(フェイスマスク)、コロナ禍においては特に医療用で販売が拡大し、この10年で売り上げは約3割伸びた。

 ベンベルグ®とベンリーゼ®は生産体制の面でも持続可能性が高いと言える。特筆すべきは、自社発電設備として水力発電設備9基、バイオマス発電設備2基を備えていることだ。延岡地区の工場が使用する電力の33%を水力で、6%をバイオマスで賄っており、再生可能エネルギー比率は約4割に上る。