患者自らが参画し選択する医療の実現を目指し、「3本の柱」を軸に課題解決に取り組む。患者の悩みを聞く専門職が、経営トップと患者団体の対話を具体的活動につなげる。

 一般的な日本の医療サービスでは、患者が製薬会社と接点を持つことはほとんどない。ペイシェント・セントリシティ(医療は患者を中心として行なわれるべきという考え方)が浸透し、患者団体と製薬会社の間で日常的にコミュニケーションが取られている欧米に比べ、患者中心の考え方が進んでいないのが日本の現状だ。そんな中、中外製薬は「患者中心の医療」の実現に向けた取り組みを進めている。

 同社は2019年1月、ミッションステートメントを再定義した。

 「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、 世界の医療と人々の健康に貢献します」という「存在意義」は堅持しつつ、価値観の筆頭に「患者中心」を掲げ、「患者さん一人ひとりの健康と幸せを最優先に考えます」とした。

 渉外調査部長の藤原尚也氏は、「これまで日本では、薬の情報は主に医師を通じて患者さんに提供されてきた。製薬会社と患者さんの距離が少し遠かったかもしれない、という反省がある。『患者中心』を最優先事項に掲げることで、患者さんにとっての真の価値を追求していくことを明確に打ち出した」と、新ミッションステートメントの意義を話す。

 同社が「患者中心の医療」で目指す姿とは、「一人ひとりが最適な治療を選択できる医療」である(下の図)。これを実現するために、中外製薬として何ができるのか。

■ 中外製薬が目指す「患者中心の医療」と、その実現に必要なもの
■ 中外製薬が目指す「患者中心の医療」と、その実現に必要なもの
(出所:中外製薬)
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患者の悩みを聞くPCSを設置

 これについて藤原氏は、「これまでのような支援を中心とした患者団体との関わり方を改め、パートナーとして共に価値を創造し、社会課題を解決していく。そのためには具体的な協働活動に向けた体制整備が必要」と話す。

 患者団体との協働に関して、中外製薬は3つの柱を軸にした。第1が「患者さんにとっての製品価値最大化」、第2が「患者さんのリテラシー(知識や情報を活用する能力)向上のための疾患啓発」、第3が「患者さんの医療参画のアドボカシー(権利擁護・代弁)活動支援」である(下の表、左列)。

■ 「患者団体との協働」における3本の柱と課題への活動
■ 「患者団体との協働」における3本の柱と課題への活動
「ダイアログ2020」を通して共有された課題を「患者団体との協働における中外製薬の3本の柱」に落とし込み、解決のための具体的な活動に取り組む
(出所:中外製薬)
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 この3本柱によって、同社が目指す姿「一人ひとりが最適な治療を選択できる医療」を実現していく。例えば「最適な治療」は、第1の製品価値最大化、つまり患者の声を研究や開発に反映させ最適な製品を提供することで実現できるようになる。