そうしたオーナー社長の思いを受けて手がけたのが、奈良県桜井市にある三輪そうめんの老舗・マル勝高田商店の新店舗「てのべ たかだや」だ。三輪山を御神体とする大神(おおみわ)神社の大鳥居からほど近く、20年3月にオープンした。

 1階はそうめん販売店と飲食店、2階がオフィスになっている。木のぬくもりにあふれた社屋の写真をホームページに載せたところ、新卒採用の応募数が増加したという。

■ 住友林業の中大規模木造建築(非住宅分野)の施工事例
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千里リハビリテーション病院アネックス棟。患者さんがリラックスしてリハビリに取り組める環境づくりを実践している
「てのべたかだや」の外観と1階店舗スペース。食文化の伝統を守りながらそうめんの新たな価値を提案する空間が実現した<br><span class="fontSizeS">(出所:住友林業)</span>
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「てのべたかだや」の外観と1階店舗スペース。食文化の伝統を守りながらそうめんの新たな価値を提案する空間が実現した<br><span class="fontSizeS">(出所:住友林業)</span>
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「てのべたかだや」の外観と1階店舗スペース。食文化の伝統を守りながらそうめんの新たな価値を提案する空間が実現した
(出所:住友林業)

 「今後は、実現した案件で健康面のプラス効果を示す様々なデータを収集し、エビデンスをそろえることでさらに需要を拡大していきたい」(杉本氏)

建築時のCO2削減効果が大きい

 脱炭素社会に向けてCO2削減に関する数値が厳しく問われる昨今、温室効果ガス総排出量の38%が建設セクターから発生するといわれている。そのうちの3割が原材料調達から輸送・加工・建築の過程で生じるCO2排出量、いわゆるエンボディード・カーボンである。

 住友林業サステナビリティ推進室長の飯塚優子氏は、「今後、再生可能エネルギーが普及すれば建物使用時のCO2排出は相対的に減り、エンボディード・カーボンの割合が増える。その場合、鉄筋コンクリート造など他の工法に比べてエンボディード・カーボンの少ない木造建築の競争力は高まるとみている」と話す。

 実際に同社は、22年4月に竣工予定の上智大学15号館についてエンボディード・カーボンを試算したところ、約217tになった。この施設は、国産材を使用する木造3階建て耐火構造で、一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の施設よりもエンボディード・カーボンを大きく削減できるとみている。

 今後、木造建築のさらなる大規模化を進めるため、住友林業は木質材料の高強度化にも取り組んでいる。採用を進めているのが、板材の繊維方向を直行させて積層接着したCLT構造材だ。21年3月に完成した桐朋学園宗次ホール(東京都調布市)は、音楽ホールとして初めてCLT構造材を採用した。ホールの利用者からは、「予想を上回る優れた音響効果」など高い評価が寄せられているという。

 住友林業は、「都市と森がつながる低炭素な街づくり」を目指している。森林で木を育て、切り、その跡地に植林して森を循環させる。その一方で切った木を使い、住宅や学校、病院、オフィスなどを建設して街をつくり上げていく。こうして森と都市とを結び付けることが、同社の目指す「低炭素な街づくり」である。

 今後は次世代を担う子どもたちに木の良さを伝える活動にも取り組んでいく。「都市部に住む子どもたちの中には、本物の木がどんなものかを知らず、プリントされた木目と、本物の木との見分けがつかない子もいる」と、杉本氏は危機感を抱く。

 低炭素な街づくりを通して持続可能な社会を目指す住友林業の挑戦は続く。