創業以来の理念に「環境保全」と「栄養」という新しい視点を加えCSVをさらに強化する。社会に貢献するとともにインスタントラーメンに新しい価値を与えることを目指す。

 日清食品グループの歴史は、1958年に創業者の安藤百福氏がチキンラーメンを開発したことに始まる。戦争で疲弊した人々が温かいラーメンを求めて闇市の屋台に並ぶ姿を思い出し、「お湯さえあれば家庭ですぐ食べられるラーメン」の開発を思い立った。その際に掲げたのが「美味、衛生的で安全、簡便調理、長期保存、手頃な価格」という開発5原則である。そして現在も気候変動や多発する災害、新型コロナウイルス感染症などによって人びとが疲弊し、企業のレジリエンスが問われる時代となっている。

 「そうした時代にあって、私たちは創業以来の5原則に新たに『環境保全』と『栄養と健康』を加え、7つの原則を大事にしていこうという結論に至った」と、広報部CSR推進室室長の花本和弦氏は語る。

30年に向けた中長期環境戦略

 新たに加わった2つの原則のうち、「環境保全」に関わる施策が、2020年6月に始動した中長期環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」である。その背景について、経営企画部課長の齋藤圭氏は次のように説明する。

 「本年は中期経営計画2020の最終年にあたる。創業以来、CSV経営を続けてきた当社が、2030年に向けたさらなる飛躍のためにも、成長戦略を環境面から支える施策が不可欠だと考えた」

 資源の有効活用とCO2排出量削減へのチャレンジを2本柱としており、それぞれ具体的なテーマを3つずつ設け、30年までに達成すべき数値目標を設定している。

 資源の有効活用を推進するのが、アース・マテリアル・チャレンジだ(下の図)。そのうち、「地球にやさしい調達」として目標を定めているのが、ラーメン製造に欠かせないパーム油の調達だ。現在、環境や人権への配慮を証明する認証パーム油の使用率は、日清食品グループ全体で約20%。30年には独自のアセスメントによる評価も加えて持続可能なパーム油を100%にする。

■ 「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」と、栄養に視点をおいたサービス・商品
「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」は、資源の有効活用に関するEarth Material Challengeと、CO2排出量削減に関するGreen Food Challengeからなり、それぞれ3項目のテーマを設定している
(出所:日清食品ホールディングス)
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 「RSPOのような認証制度だけでなく、森林破壊ゼロ・泥炭地ゼロ・搾取ゼロというNDPE方針などの国際基準に基づき、第三者機関である経済人コー円卓会議日本委員会にもチェックしてもらいながら、自社でアセスメントできるような仕組みを整えつつある」と、広報部CSR推進室課長の岡林大祐氏は語る。

 「地球資源の節約」については、製造工程の水使用量が売上高100万円あたり12.3㎥という目標値を実現できており、それを維持する。「ごみの無い地球」では、日本国内の製造工程における廃棄物のリサイクル率を引き続き99.5%以上維持し、30年までに販売流通段階での廃棄物を50%削減する目標を立てている。

 CO2排出量削減を目指すのが、グリーン・フード・チャレンジである。「グリーンな電力で作る」というチャレンジでは、日清食品グループの温室効果ガス排出量が、SBT(科学的な根拠に基づく目標)の認定を20年4月に受けた。再生可能エネルギーの活用や省エネルギー活動などにより、グループ全体の温室効果ガス排出量を30年度までに29.1万tにし、18年度比で30%削減する目標を立てている。削減のための方法の一つが、自治体のごみ焼却の熱で発電したエネルギーの購入である。

 「麺のカップには油汚れがあるため、焼却処分せざるをえない。そこで焼却発電施設からの電気を、電力アグリゲーターを介して買い取るという循環サイクルを考えた。購入した電力は日清食品ホールディングス本社で使用している」(岡林氏)

 一方、スコープ3では、包材・具材の改良や輸送の工夫でバリューチェーン全体のCO2排出量を15%削減することを目標としている。

 「グリーンな包材で届ける」については、19年からバイオマスECOカップを導入した。08年以前の石化プラスチックカップに比べて、プラスチックを40%削減し、CO2を34%削減した。

 「グリーンな食材を使う」点では、植物由来代替肉を製品化している。大豆をベースとしており、大豆は牛肉に比べて環境負荷が低く、CO2排出量は原料調達段階で12分の1である。今後は、動物の細胞を培養して得られたサステナブル食材「培養肉」の実用化を目指している。