人と地球の共生を目指すヤクルトは、事業活動そのものがSDGsの目標3に通じる。2050年のあるべき姿に向けて環境ビジョンを策定し、マイルストーンの設定で実現を目指す。

 ヤクルト本社を中心としたヤクルトグループは、事業活動そのものが病気の予防や人々の健康維持・増進を目的とする。SDGsが掲げる目標3「. すべての人に健康と福祉を」に深く関わる企業だ。日本国内には5支店、7工場とボトリング会社5社、中央研究所(東京都国立市)、販売会社101社がある。海外では29事業所が39の国と地域で事業を展開する。

 世界人口約76億人のうち、同グループの乳製品販売対象エリアの人口は24億人に達する。世界全体の1日当たりの平均乳製品販売本数は、4015万本(国内958万本、海外3057万本・2020年度実績)に及ぶ。

 これら事業は、創始者で医学博士の代田稔の考えである「代田イズム」が原点となっている。代田イズムは、病気にかからないための「予防医学」、腸を丈夫にすることが健康で長生きにつながる「健腸長寿」、腸を守る乳酸菌 シロタ株を多くの人に届けるための「誰もが手に入れられる価格で」という3つからなる。

 21年3月、同グループは「ヤクルトグループ環境ビジョン」を策定した。「生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献」するという企業理念の下、人々が健康であるためには、水や土壌、空気、動植物、社会のすべてが健康であることが必要という思いを込めた。

部署横断で環境ビジョンを策定

 環境ビジョンの策定にあたっては20年、社内20部署から約40人以上が参加する部署横断型のワーキンググループをつくり、5回にわたって議論した。

 CSR推進室主事補の星有加里氏は、「様々な部署の担当者が集まり、ステークホルダーの視点で、優先して取り組むべきマテリアリティについて議論した」と説明する。

 その議論を受けて6つのマテリアリティ、「イノベーション」「地域社会との共生」「サプライチェーンマネジメント」「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」を特定し、その上で50年のあるべき姿として「環境ビジョン2050」を策定した。サプライチェーンを含めた環境負荷ゼロ経営に向けて、温室効果ガス排出量ネットゼロを目指す。

■ ヤクルトグループ「環境ビジョン」の体系
■ ヤクルトグループ「環境ビジョン」の体系
「環境ビジョン2050」の実現に向けて、30年までの中期目標「環境目標2030」と、短期的行動計画「環境アクション(2021-2024)」を策定した
(出所:ヤクルト本社)
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気候変動シナリオを分析

 喫緊の課題となる気候変動については、温暖化が進んで気温が2℃上昇した時と4℃上昇した時を想定してシナリオ分析を行った。乳製品製造が主軸の同グループにとって、原料となる脱脂粉乳の調達が困難になるリスクが浮き彫りになった。

 CSR推進室主席参与の増田龍一氏は、「気候変動によって牧草地が減少したり、集乳量に影響が出たりする可能性もある。ワーキンググループでは、将来は大豆など植物性の原料を使った製品の開発が必要になるかもしれないという踏み込んだ議論もあった」と話す。