花王は包装技術の革新を通じてプラスチック使用量の削減に取り組む。利便性や衛生面を向上し、「ボトル容器を超えたフィルム容器」に挑戦する。

 海洋汚染や地球温暖化の深刻化を受け、世界中でプラスチック削減の動きが活発化している。その中で花王は包装容器の革新を通じて、この問題の解決を目指す。

 「我々のミッションは、包装技術の進歩によって日本だけでなく世界のプラスチックごみ問題を解決すること。『リデュースイノベーション』というキーワードを掲げ、プラスチック使用量の削減に取り組んでいる」。研究開発部門包装技術研究所の稲川義則所長はこう話す。

ボトルからフィルムに転換

 これまでも花王はボトル容器の小型化、薄肉化や、ボトル容器に張るアイキャッチシールの見直しなどの取り組みによって、プラスチック使用量の削減を進めてきた。そして今、最も力を注ぐのがボトル容器からフィルム容器への転換だ。

 包装容器をプラスチックボトルからフィルム容器に切り替えた場合のプラスチック削減効果は大きい。例えば「ビオレu」のボトル容器のプラスチック重量は39.4g、フィルム容器ならば8.3gで済む。

 花王は約30年にわたりフィルム容器の開発に取り組んできた。1991年、食器用洗剤「モア」の詰め替え製品で初めてフィルム容器を採用した。それ以来、ヘアケア製品などにも詰め替えフィルム容器の採用を拡大してきた。

 現在、日本市場における同社製品販売数の約8割が詰め替えだ。2019年のプラ使用量は3万5500t、すべてボトル容器を使用したと仮定した場合に比べ、75%ものプラスチックを削減した計算になる。

 フィルム容器開発に取り組んだ当初、追求したのは「ボトル容器への詰め替えやすさ」だった。ユーザーの声に耳を傾けながら、フィルム容器の形状や注ぎ口の位置などの工夫を重ねた。それがある時から、開発の目線が、「ボトル容器を超えたフィルム容器への挑戦」に変わった。

 きっかけは、16年に「つめかえ用ラクラクecoパック」という名で投入した「ボトル ライク パウチ(BLP)」だ。BLPも、詰め替えやすさにこだわって開発したフィルム容器だった。液体を注ぎやすくするためスパウトノズルとキャップを採用し、立体形状にした。フィルム容器ながら持ちやすく、運びやすく、コンパクトになったことから、「詰め替え用ではなく、そのまま本体容器として使えるのではないかと考えた」(稲川所長)。

 スパウトノズルやキャップを採用しても、全体のプラスチック使用量を増やさない工夫を凝らした。BLPは、従来の袋状フィルム容器の下部にあったマチを上部にも付けたことで容器の起立性が向上した。フィルムをシールして容器を作ってから、注ぎ口いっぱいに液体を充填できる。一方、袋状容器は、液体を充填してから充填口をシールして密閉する。口までいっぱいに充填するとシール時に液体がこぼれるため、フィルム面積を大きく設計して液面と注ぎ口の間に余裕を持たせていた。BLPはこれを削減できたため、フィルム面積を35%、厚さを20%減らすことに成功し、中身の充填率も高めた。

 17年にはBLP専用の「スマートホルダー」(下の写真)を発売した。BLPをホルダーにはめ込み、ディスペンサーを差し込むと、ボトル容器に詰め替えずにそのまま使える。

■ 花王がプラスチック使用量を削減するため開発したフィルム容器
■ 花王がプラスチック使用量を削減するため開発したフィルム容器
ボトルライクパウチ(BLP)容器と専用ホルダー「スマートホルダー」(左)。ボトル容器に詰め替えるのに比べ、詰め替え時間が短縮し、中身の残量を少なくすることができた。BLPはさらに進化した。新商品「ビオレu ザ ボディ ぬれた肌に使うボディ乳液」(右)は、専用ノズル「らくらくスイッチ」を容器に装着し、付属のS字フックで吊り下げて使う
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 独自開発したディスペンサーのエアレスポンプは空気や水を混入せず真空状態で中身を吸い上げる。BLPからボトル容器に詰め替えると、中身の約6gが容器内に残るのに対し、スマートホルダーを使うと残量を約3gに抑えられる。

 容器内に空気や水が混入することなく、菌に汚染するリスクも低いなど、利便性や衛生面での利点も多い。

 20年9月、花王はBLPのさらなる進化を図った。新発売の「ビオレu ザ ボディ ぬれた肌に使うボディ乳液」のパッケージにBLPを採用し、この製品専用のノズル「らくらくスイッチ」を開発した。スイッチを押すとエラストマーが変形し、中身が適量出る。付属のS字フックで、浴室のタオル掛けなどにつるして使えるようにした。風呂上りに浴室で、体が冷える前にさっとボディケアできる新しい習慣を提案している。

 「どんなに環境性能を強化しても消費者の手に届かなければ意味がない。多くの人に『これを使いたい』と魅力を感じてもらいたい」と稲川所長は話す。環境貢献を念頭に置きつつ、バストイレタリー製品としての完成度を高めることに注力する。