このように、日本市場では詰め替え・付け替えの製品が存在感を増してきた。しかし、その習慣が定着していない海外では、また違う形で、フィルム容器製品の普及を促進する。20年、2種の新製品を投入した。
1つ目は、20年4月に米国で展開を始めた新ブランド「MyKirei by KAO」のシャンプー、コンディショナー、ハンドウォッシュだ。「エアー イン フィルム ボトル(AFB)」と呼ぶ新タイプのフィルム容器を開発した。
AFBは薄いフィルムを重ねて形成されている。外側の2層の間に空気を入れ、浮き輪のように膨らませると自立する。プラスチック使用量を約50%削減しながら、ボトル容器と同様に使える画期的な容器だ。
20年7月には新フィルム容器「チューブ ライク パウチ(TLP)」を投入した。TLPはBLPの上下を倒立させ、安定性を高めるためにキャップを大きくした。欧米で展開するヘアケアブランド「ジョン・フリーダ」のシャンプー、コンディショナーに初採用し、米ウォルマートの店頭とECサイトで期間限定販売している。
リデュースイノベーションを進める花王が次に挑むのが「リサイクルイノベーション」だ。使用済みプラスチック容器の完全リサイクルを目指す。
「フィルムtoフィルム」目指す
現在、花王は神奈川県鎌倉市など自治体やパートナー企業と協働し、使用済みのフィルム容器を回収して造った再生プラスチックのブロックを製造している。地域で役立ててもらうことで、循環型社会への新しいシステム・ライフスタイルの提案をしている。米国では、リサイクル会社の米テラサイクルと共同で使用後のAFBを回収してリサイクルする仕組みを構築した。
稲川所長は、「フィルム容器の普及を推進する企業として責任を果たすため、フィルム容器からフィルム容器を作る世界初の『フィルムtoフィルム』のリサイクル技術を開発したい」と意気込む。技術をさらに磨き、他企業と連携して仕組みを整え、フィルム容器への完全リサイクル体制を確立する考えだ。持続可能な社会の実現に貢献し、プラスチック削減の取り組みを進化させていく。