通信、家具、電機も動いた

 日本で事業再編が本格化しつつある。

 通信最大手のNTTは20年12月、4兆2500億円をかけてNTTドコモを完全子会社化した。再編を主導したのは、NTT株式の3割を保持する国である。これまで日本の通信インフラを握る“巨象”には、同業他社との競争を維持するためのかせをはめてきた。しかし、世界では次世代通信規格5Gやその次の6Gを巡り競争が激しくなっている。ここに危機感を持った国が、NTTに事業ポートフォリオ改革の断行を迫った。

 家具大手のニトリホールディングスは20年12月、ホームセンターを展開する島忠を買収した。島忠を巡っては当初、ホームセンター最大手のDCMホールディングスが株式公開買い付け(TOB)を表明していたが、その後ニトリがDCMより3割高い価格で島忠株を買い取る意向を表明。最終的に買収合戦はニトリに軍配が上がった。ニトリの手法は、これまでなら「敵対的TOB」として非難の対象になっていたケースだろう。しかし今回は、強者による買収を市場も歓迎した。たとえ「後出し」や「横取り」だったとしても、誰がベストオーナーかは市場が決める。こうした流れが本格化してきた。

 事業ポートフォリオ改革を試みながら、道半ばで退くのがパナソニックの津賀一宏社長だ。在任9年。21年6月の株主総会後に代表権のない会長に退く。電機各社が事業を絞り込むなか、同社はいまだに多くの事業部を抱え、「家電メーカー」から脱却できずにいる。退任と同時に残す置き土産が、持ち株会社への移行だ。「パナソニックホールディングス」の下に事業会社をぶら下げ、事業の選択と集中を図る。事業ポートフォリオ改革は、持ち株会社に託された。

 事業ポートフォリオ改革は、終身雇用や年功序列が象徴する日本型経営にどっぷり漬かってきた日本企業の課題そのものだ。危機のなか、いつまでたっても変われない企業に未来はない。勝てる事業を取り込み、将来性のない事業を切り離す。世界の競合に勝つために、日本の経営者のジレンマを超え、変化する社会に合わせて企業の姿を柔軟に変化させていく。そうした経営が必要だ。

 前述の三菱ケミカルHDをはじめとする先進企業は、ガバナンスをテコにして、企業を変えようとしている。

 20年末から、企業のガバナンス指針であるコーポレートガバナンス・コードの再改訂議論が始まった。主要な議題となっているのが、まさに事業ポートフォリオ改革である。国は改訂コードを22年4月に予定されている東京証券取引所の市場再編につなげたい考えだ。改訂コードを上場の最低基準とし、基準をクリアできない企業は、市場から降格させる。いよいよ、改革できない企業の「選別」が始まる。

*  *  *

 2021年2月8日発行の『日経ESG』最新号(2021年3月号)では、特集記事「事業再編、意思決定、取締役会を変える 自己変異ガバナンス」を掲載しています。

 売り上げや利益などの規模の指標を捨て「ROIC経営」に踏み出した味の素、「サステナビリティ経営」への大転換に踏み出したファーストリテイリングなどの事例を紹介。経営者、社外取締役、投資家などのインタビューを交え、100年後も企業が生き続けるためのガバナンスについて解説します。