なぜ今、パーパスの存在感がこれほど大きくなっているのか。一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏は、「1つは、コロナ禍でリモートワークになったことでいろいろ考える時間ができ、『なぜ自分はこの会社で働いているのか』を問い掛けるようになったことが大きい。もう1つは、所得格差も含めて不安材料がいろいろ出てくる中で、自分たちの働く上での心のよりどころを求めたくなっていることがある」と説明する。企業にとって成長の源泉である人材を生かすためにもパーパスが欠かせなくなっている。

額に入ったままでは価値はない

 自社が何のためにあるのか──。企業はこれまで存在意義を明確にしていなかったのだろうか。多くの場合、企業理念や経営理念として明文化しているはずである。ただ、企業理念や経営理念は額に入れて飾られたままになっており、社員が日々の仕事で意識することがほとんどないのが実情だろう。

 そうした背景から、多くの企業が新たにパーパスを定義し、社員が日常業務で意識、実践するものにしようとしているのだ。その一方で、パーパスが今のように注目を浴びるずっと前から、パーパスを起点とする経営を推進し、企業価値を高めている企業は存在する。オムロンと英ユニリーバはその代表例といえる。両社の取り組みからは、持続的に価値を生み出す強い組織へと変革する真のパーパス経営を実践するヒントが見えてくる。

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写真:Getty Images/Scott Smith
写真:Getty Images/Scott Smith

 2月8日発行の『日経ESG』の最新号(2022年3月号)では、パーパスを起点とした経営を実践する先進企業の事例をリポートした特集記事「グローバル先進企業に学ぶ 強い組織に変革する『真・パーパス経営』」を掲載しています。

 なぜ今、パーパスが注目されるのか、その背景や、オムロンと英ユニリーバの国内外を代表する先進企業のケーススタディ、「人材版伊藤レポート」で経営者が果たすべき役割としてパーパスの明確化を挙げている伊藤邦雄・一橋大学CFO教育研究センター長のインタビューをお読みいただけます。