2050年までのカーボンニュートラル宣言を実現する戦略の1つとして、CO2排出に課金する「カーボンプライシング」の検討が始まった。政治家の関与と経営者の意識変化で導入が現実味を帯びつつある。

 「成長につながるカーボンプライシングにも取り組んでまいります」。2021年1月18日、菅義偉首相は施政方針演説でこう話した。50年までのカーボンニュートラル(実質ゼロ)実現に向けた戦略の1つとして、日本も「カーボンプライシング」の検討に踏み切ることとなった。仮に政策として導入に至れば、企業にとって気候変動対策に関わる投資や戦略が変わる転換点となる。

首相の一声で導入に現実味

 「炭素価格」「CP」などとも呼ばれるカーボンプライシング。その代表例である「炭素税」や「排出量取引」の導入が、首相の一声で現実味を帯びている。

 「(21年の)最大の目標はカーボンプライシング」。小泉進次郎環境大臣は20年12月11日の会見の際、こう意欲を示した。梶山弘志経済産業大臣も同日、「産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながる形があり得るかを検討していく」と話した。現在は経産省が研究会、環境省が小委員会の名で学識者や経済界による議論を進めている。

 「将来の首相候補でもある小泉環境大臣が導入に意欲を示した。どの省であれ官僚は小泉大臣に協力しようとするだろう」。エネルギー会社の経営幹部はこう苦笑いする。

  21年3月、自由民主党内にも、カーボンプライシングに関する作業チームが設置された。有力政治家の強い関与で、これまでとは違う展開を想定せざるを得ない。

梶山弘志経済産業大臣(右)と小泉進次郎環境大臣はそれぞれの省内で検討を開始した(写真:つのだよしお / アフロ)

  カーボンプライシングは、「化石資源の消費によるCO2の排出」に値段(価格)を付けることだ。化石資源の消費量やCO2排出量の削減を促せる。企業に対しては、CO2削減につながるエネルギーや技術の採用拡大、効率改善、設備投資、研究開発や、脱炭素型のビジネスモデルや経営への転換と投資を促すとされる。

 なぜその検討を首相が指示するまでに至ったのか。理由は大きく3つある。

 1つ目は冒頭で述べたように、50年実質ゼロを実現するためである。従来のCO2排出の多い製品や技術の利用に炭素税を上乗せするなどして、排出の少ない代替の製品や技術のコストを相対的に安くすれば後者への移行を促せる。例えば、水素やアンモニアといった「CO2フリー」のエネルギーや、CO2回収・貯留(CCS)など、脱炭素に不可欠な技術の普及加速が期待される。