日経ESG2020年12月号(11月8日発行)の特集は「CO2ゼロでつくる」。米アップル、独フォルクスワーゲンといった巨大ブランドオーナーが、iPhoneやクルマの製造時におけるCO2排出の実質ゼロを追求し始めた。これは素材を含むものづくりで一貫してCO2ゼロを目指すことを意味する。脱炭素化に向けた企業の動きを追う。

iPhoneをCO2ゼロで作る

 2020年7月、アップルは2030年までに製品製造を含むサプライチェーンからのCO2排出を「カーボンニュートラル(炭素中立)」にすると発表した。同社のサプライチェーン排出の76%を占めるサプライヤー工場での生産設備の稼働や素材の製造などによる排出を大幅に減らす。

アップルの中国クリーンエネルギー基金を活用した中国湖南省にある48MWの風力発電所(写真:アップル)

 既に18年にはオフィスやデータセンター、直営店など事業で使う電力をすべて再エネ電力に切り替え「RE100」を達成した。サプライヤーにも再エネ電力の利用を働き掛け、生産設備の稼働によるCO2排出を減らす。既に17カ国の71社が、アップル向け供給品を再エネ電力のみで製造すると約束した。サプライヤー工場で約780万kWの電力消費が再エネに切り換わる。

 もう一方の、素材製造におけるCO2削減の第一歩がアルミニウムだ。ノート型コンピュータ「MacBook Pro」16インチへの「CO2フリーアルミニウム」の採用を発表した。

 このアルミ製造技術は資源会社の英豪リオティントと米アルコアの合弁会社、エリシスが開発した。通常ならCO2を排出する精錬工程で使う触媒の材料を替えてCO2の発生をゼロにした。アルミを多用する同社製品への採用拡大が期待される。

 アップルは7月の発表で全ての製品でアルミや鉄、プラスチック、ガラス、紙といった素材にCO2排出を抑えて作られたものを使うと強調した。鉄鋼・金属や化学など素材産業は、製造工程で石炭や石油など化石資源を使わざるを得ず、CO2を排出する。世界の素材産業が製造技術の革新を進めているが、50年に世界全体で商用規模に至る道筋を描けていない。それでも排出実質ゼロをサプライヤーに求める理由を、アップルは「他社に対し、気候危機への対処に必要な積極的な行動を促すため」と説明している。