今回、野村総研が発行した「NRIサステナビリティ・リンク・ボンド」は年限が12年で、2つの目標を設定している。1つは、同社グループの温室効果ガス排出量を30年度に13年度比72%削減すること。もう1つは、同社のデータセンターでの再生可能エネルギー利用率を30年度に70%にすることである。

 31年の7月に目標を達成できたかどうかを判定する。野村総研は目標を達成できた場合、期限前の10.5年で償還できる。達成できなかった場合、10.5年から先の利率が年0.355%から同0.811%に上がる(目標達成でも期限前償還を選択しなければ同様の条件になる)。ただし、当初の利率を10.5年債の水準に設定しているため、投資家が満期を迎えて受け取る利息の総額は12年債に投資した際に受け取る水準と同じになるという。

 野村総研にとって期限前に償還できることが目標達成のインセンティブになり、投資家から見ても「目標を達成できたから損をするわけでもないし、達成できなかったから得をするわけでもない」(野村総合研究所財務部財務企画課副主任の福本晋也氏)。

 このボンドに48億円投資した第一生命保険は、「パリ協定と整合した目標にきちんと道筋を付ける内容になっていると評価した」(債券部国内社債課長の藤田ゆり子氏)。

 その上で、「発行体からすると目標未達はペナルティーにはならず、投資家から見た場合も、もともと12年債の投資と同じリターンを得ているため、発行体による早期償還がデメリットにはならないと言える。本タイプの債券のようにサステナビリティ・リンク・ボンドの商品設計が多様化していくことは、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行体層や投資家層を広げる。ひいては、サステナブル金融市場の拡大にも寄与していくのではないかと期待している」(同)と続ける。

 野村総研のサステナビリティ・リンク・ボンドは、投資家のジレンマ解消へ一石を投じたと言える。

 ANAホールディングスが21年6月に発行するサステナビリティ・リンク・ボンドは、同社が目標を達成できなかった場合、環境・社会課題の解決に取り組む企業や団体に寄付する仕組みだ。仮に目標未達に終わったとしても、寄付を通じて社会に対してポジティブなインパクトを生み出す。この債券の年限は5年。目標には、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックス(DJSI World)への選定や、CDPで「A-」以上の評価取得など4つを設定した。これらの達成度合いを役員報酬にも反映する。

 「社会的インパクト」と「経済的リターン」の両方をどうやって生み出すか、投資家と企業の試行錯誤が続く。