世界の主要な機関投資家があらゆる企業に脱炭素の要請を強めている。情報開示についても不十分な場合、株主総会で反対票を投じられたり、ダイベストメント(投資の引き揚げ)をされたりする恐れがある。

 2050年の脱炭素(CO2排出実質ゼロ)にコミットする金融機関の融資連合「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」は今年6月、金融機関に対して脱炭素の推進に向けた指針案を公表した。GFANZには45カ国から約450の金融機関が加盟しており、日本からも3メガバンクなどが加わっている。運用資産総額は130兆ドル(約1.7京円)に上る。

昨年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、写真上)で「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」が発足した<br/>写真:UNFCCC Flickr
昨年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、写真上)で「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」が発足した
写真:UNFCCC Flickr

 指針案では、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を参照し、脱炭素への道筋を示す「移行計画」やその進捗状況などを開示するよう求めている。機関投資家は今後、運用ポートフォリオの脱炭素を実現するため、投融資先企業への圧力をますます強めるとみられる。既に、世界の主要な機関投資家は、投資先企業の取り組みが不十分な場合、株主総会での反対やダイベストメント(投資引き揚げ)といった手段に出ている。

株主総会の6割で反対票

 仏資産運用大手のアクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)は21年、投資先企業の株主総会の59%で経営陣に反対票を投じた。前年から3ポイント増えた。反対票の半数が、取締役会や役員報酬に関する要件を満たしていなかったことによる。反対票を投じる前にはエンゲージメント(建設的な対話)を実施しており、気候変動に関するものが全体の33%と最も多い。

 同社は今年4月、新たな議決権行使方針を発表した。企業に環境や社会問題へのさらなる配慮を促す。
取締役会については、環境や社会問題を適切に管理できていない場合、取締役や指名委員会の委員長などの選任に反対票を投じる。ダイバーシティも重視しており、米国と英国の大企業に対しては、民族的なダイバーシティがなければ反対票を投じる。報酬の面では、賞与や長期のインセンティブに明確なESGの要素を含めるよう求める。重要業績評価指標(KPI)が適切かどうかといった点が判断のポイントになる。

 エンゲージメントで主要テーマにしている気候変動に関しては、脱炭素に向けた戦略や移行計画などを評価する。気候変動の影響を大きく受ける業種は、脱炭素戦略に沿った役員報酬方針を設けているかどうかも判断基準になる。非財務情報の開示・報告も要件に掲げた。国際的なフレームワークの採用や、目標達成状況の報告を要請していく。

 アクサIM RIコーディネーション&ガバナンス・ヘッドのクレマンス・ウモー氏は、「TCFDに沿った開示をしていない場合は株主総会で報告書や会計の承認に反対票を投じる可能性がある」と言う。

 非財務情報の開示に関しては、現在、IFRS(国際会計基準)財団が世界標準となる基準を策定しようとしている。欧州連合(EU)でも、企業にサステナビリティ情報の開示を求める企業持続可能性報告指令(CSRD)案を昨年4月に発表し、今年中に具体的な開示基準を決定する見通しだ。アクサIMは、「(ISSBやCSRDなどの)新しい基準を参考にしながら企業に開示を働きかけていく」(ウモー氏)。