岡林 今回のイベントで印象に残ったのは、私自身もそうなのですが、みんなネガティブな経験を持っていなかったことです。40歳代以上の人たちからは傷つけられた体験を聞きますが、若い世代はかなり明るいと感じました。この10年ほどで社会の理解はかなり進んだと思います。私は中途入社社員の導入研修を担当していますが、「アウトフォースを知って入社しました」とか、「私は同性愛者です」と誇りを持って話してくれることがあります。個性として武器にしてくれる仲間が増えていることがとてもうれしいです。

平等への取り組みは会社にどのような利益をもたらすのでしょうか。

エグゼクティブスポンサーとしてアウトフォースに参加している森田青志シニアバイスプレジデント
エグゼクティブスポンサーとしてアウトフォースに参加している森田青志シニアバイスプレジデント

森田 会社が利益を上げるためにやっているのではないことは断言できます。私は20年4月にソリューションエンジニアの責任者に就任したのと同時に、エグゼクティブスポンサーも併せて前任者から引き継ぎました。その前の19年4月に「東京レインボープライド2019」(性的指向にかかわらず全ての人が誇りに思って生きられる社会を目指したイベントでセールスフォースもスポンサーになっている)のパレードに参加しましたが、全国から参加した人たちとの交流がとても楽しかった。その後もアウトフォースの活動を通しLGBTQについて知れば知るほど、アライを広げたいと腹の底から思えるようになりました。

 セールスフォースは、大切にする価値観として「信頼」「カスタマーサクセス(顧客の成功)」「イノベーション」「平等」の4つを掲げています。顧客企業に平等を説明する際に、以前は教科書的な説明になっていたのが、今は実体験を基にお話しできるようになりました。SDGs(持続可能な開発目標)が普及してきたことによってダイバーシティへの関心が高まり、顧客企業も真剣に耳を傾けるようになってくれています。「こういう取り組みをしている企業とつきあえば学ぶことがあるかもしれない」と思われることが増えているのではないかと思います。その意味では、結果として利益につながっているかもしれません。

アウトフォースのリーダーを務めると給料にも反映されるのですか。

森田 全く別です。ただ、コミュニティ活動で相手を知り、信頼関係ができれば、一緒に仕事をするときにスムーズに進みます。まわりまわって仕事に生きるという効果は実感しています。

活動のゴールはどこですか。

岡林 カミングアウトデーのイベントのアンケートに「当事者という言葉を使うことに違和感がある」という回答がありました。私もラベルを張ることに違和感を持ちます。カミングアウトという行為自体がなくなる環境をつくることが目標です。



 ベニオフCEOの著書『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』(東洋経済新報社)には、平等へのこだわりがよく伝わるエピソードが紹介されている。15年3月、インディアナ州の議会がLGBTQに対する差別を容認する法律を可決した際に、同州における全てのイベントへの参加中止と同州への出張禁止というビジネスボイコットを宣言し、多くの企業を巻き込みながら州知事に働きかけて法律を修正させた。企業経営者が政治に関わることへの葛藤を抱えながら、平等を守るために闘ったことを明らかにしている。

 セールスフォースには、社会貢献などを目的としたアウトフォースのような社員グループが12ある。日本ではアウトフォースのほか、女性活躍のウィメンズネットワーク、障がい者雇用を促進するアビリティフォース、サステナビリティを推進するアースフォースの4つが活動している。加えて20年10月、日本と韓国を統括するイクオリティ・オフィス(平等推進室)を設置した。女性活躍と障がい者雇用を中心に活動を進めていく方針だ。

 米フォーチュン誌の「働きがいがある会社ベスト100」にセールスフォースは11年連続で名を連ねる。IT業界での激しい人材争奪戦を勝ち抜くためにも、社員の働きがいを高める平等への取り組みは欠かせない。