森島 妥協なき栄養の1つは「おいしさに妥協しない」です。どういうことかというと、健康や栄養に価値がある食品は、身体にはいいけどおいしくないが世の中の定説になっていますよね。当社は、栄養や生理機能とともにおいしさをつくれます。例えば、塩分を減らすと普通はもの足りなくておいしくなくなりますが、それをうまみを中心にした技術を使っておいしく減塩します。おいしいから減塩が続けられるので、健康寿命を伸ばすことにつながります。

 もう1つは「食へのアクセスに妥協しない」です。世界中のどんなエリア、どんな階層の人でも必要なもの、欲しいものが手に入れられるように売り方などを工夫することです。ここでいうアクセシビリティには、誰でも失敗なく作れる、簡単に食べられるといったことも含みます。

 最後に「地域の食生活に妥協しない」です。当社の主力である調味料は、地域の食文化をベースにしないと受け入れられません。例えば、風味調味料を東南アジア各国で販売していますが、タイとインドネシアでは商品名もレシピも変えています。その地域の食文化にきちんと寄り添って商品化を進めています。地域に受け入れられてきたやり方にこれからも力を入れていきたいと考えています。

私が馴染み深いのは冷凍食品の「ギョーザ」です。初めて一人暮らしをした頃からお世話になっていますが、最近では自然に羽根ができるなど進化を肌で感じます。「誰でも失敗なく作れる」を具体化した商品ですね。

森島 それもアクセシビリティの1つです。油をひかなくていいですし、水の量を測って入れる必要もありません。皮の部分は炭水化物で、タンパク質のお肉や、野菜も入っています。餃子は栄養バランスの点でとてもいいメニューだと思います。

幸せの提供が会社のベース

ESGやSDGs(持続可能な開発計画)を深く考えるようなご自身の体験がありましたら教えてください。

森島 30年以上勤めてきた中で忘れられないできごとが2つあります。アミノ酸の機能性を生かしたサプリメントの通販事業を担当していた時のことです。サプリメントの通販では、お客さまに毎月商品をお届けするコースが売り上げの中心です。東日本大震災の際、被害にあった東北地方で契約していただいているお客さまの数千人の名簿がありました。震災直後にやったのは、商品を受け取れるかを往復はがきで確認することです。食品メーカーとしてできることはないかと考えて、「受け取れる」と回答したお客さまには、サプリメントだけではなくカップスープも一緒に届けようということになりました。当社の倉庫も荷崩れして大変だったのですが、食品事業本部に頼むとすぐに用意してくれました。

 忘れられないのは、3歳のお子さんのお母さんから「震災の後に夜泣きをして笑わなくなっていた子供が、温かいカップスープを飲んで初めて笑いました」という連絡をいただいたことです。嬉しくて同僚とみんなで泣きました。人に幸せを提供できる食品メーカーとしての原点のようなものを感じました。

 もう1つは、グリシンのサプリメントのお客さまから声をコールセンターで聞いた時のことです。神経系の難病を抱えるお子さんのお母さんからでした。お医者さんから特効薬が見つからないと言われ、病気と付き合っていくしかないとあきらめていたのに、サプリメントを飲んでお子さんの目の力が変わってきたというのです。息子の変化が嬉しくて、友達と会話をしている時に心の底から笑っている自分を発見したとおっしゃっていました。やはり、幸せを提供することが企業のベースだと実感した体験です。