Well-Being(ウェルビーイング:よく生きる)を第一線で研究し、企業経営にもたずさわる石川善樹さんが描く2030年を聞く。
Well-Beingを研究している石川さんにとって、2030年はどのようになっていますか。
石川 僕がウェルビーイングに取り組んでいるのは、実は2030年を狙っているんです。2030年や2050年の世界がどうなるのかは分かりません。2030年に人々がどういう指標を重視するのか。その1つの要素にぼくは「ウェルビーイング」を入れたいと思っています。

(写真:鈴木愛子)
SDGsは「No one left behind(誰も取り残さない)」を掲げていますが、基本的には「save the life, save the earth(命を守り、地球を守る)」と言えます。ダメージを減らすことに主眼が置かれているとも言えます。しかし、「マイナスを減らす」ことと「プラスを増やす」は全然違う営みです。
2030年にSDGsが終わります。すると「ポストSDGs」という話になるのですが、座して次なるテーマを待つよりも、僕はポストSDGsにウェルビーイングをぶち込みたい。当然、SDGsのような世界の目標に入れるためには、ウェルビーイングが測定できなければなりません。そのために、世界中の人たちのウェルビーイングがリアルタイムで測定できる状況を今つくっています。具体的には、Global Wellbeing Initiativeを立ち上げ、世界各国の研究者、企業、国際機関の人たちとネットワークし共創を始めました。また世界160カ国のウェルビーイングの測定を2020年から開始しました。
おそらく「ポストSDGs」の議論は2028年頃から始まります。それに間に合うように今から準備しなければなりません。放っておくと、どこぞの誰かがポストSDGsのコンセプトを考え出します。ぼくは、それに従うのは絶対イヤだから、自分たちでつくりたい。そのため、世界中のウェルビーイングを測定するための公益財団人「Well-being for Planet Earth」を2018年に立ち上げました。ウェルビーイングに関する国内外の研究開発活動への助成を通じて研究者を支援していきます。