地域を巻き込み「希少種」を再生

 キリンは環境でもトップテンに常に名を連ねている。特に「生物多様性の保全」(4位)の評価が高い。5年ほど前から力を入れているのが、 ブドウ園で行っている希少種の植生を再生させる活動だ。

 「ワイン生産のためのブドウ畑が今、生態系を育む良質な草原として注目されている」と、CSV戦略部の藤原啓一郎氏は話す。

 ワインの原料となるブドウは主に垣根栽培で作られる。日当たりの良い緩斜面が多く、土壌が流出しないように草花を生やすため、下草は草原のようになる。そこに姿を消していた動植物が戻り、生態系が豊かになるというわけである。

 16年に開墾を始めた山梨県甲州市の天狗沢ヴィンヤード(ブドウ園)では、荒れ地からブドウ畑らしい姿へと変わるにつれ、生態系が豊かになっていく様子が調査によって確認されている。

 「19年までは確認できたチョウは12種類だったが、20年は希少種のコキマダラセセリを含め15種類に増えた」と藤原氏は報告する。

 長野県上田市にある椀子ヴィンヤードでは、地域を巻き込み、在来種・希少種の植生を再生する活動を行っている。絶滅危惧種のチョウ「オオルリシジミ」の唯一の食草であるクララを、地域住民が育て、ブドウ畑に植え替え再生させようという試みだ。クララが繁茂すればオオルリシジミを呼び戻せるかもしれない。

椀子ヴィンヤードでは2014年に実施した生態系調査で昆虫168種、植物288種を確認。以後、毎年植生調査を行い、在来種・希少種の植生を再生する活動を行っている
椀子ヴィンヤードでは2014年に実施した生態系調査で昆虫168種、植物288種を確認。以後、毎年植生調査を行い、在来種・希少種の植生を再生する活動を行っている
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椀子ヴィンヤードで発見された希少な植物のクララ
椀子ヴィンヤードで発見された希少な植物のクララ
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 「日本のワイン市場の拡大に伴い、ブドウ畑の開拓が急務になっている。その中で、遊休地の活用による地域活性化や、豊かな生態系の再生など、いくつもの価値につなげていきたい」と藤原氏は展望する。

 地域とともに価値を「共創」するキリンの姿がここにもある。