約2万人にESGの視点から企業のブランドイメージを聞く「ESGブランド調査」。2000年から継続してきた「環境ブランド調査」の対象範囲を「環境(E)」だけでなく、「社会(S)」や「ガバナンス(G)」まで広げ、「インテグリティ(誠実さ)」の項目を加えた。第1回の調査結果から、上位企業の取り組みやテーマごとの特徴を連載で紹介する。今回のテーマはガバナンス。取締役会の体制が整備されている企業が上位にランクインした。コロナ禍の特殊な状況で、雇用を守れる強い会社の評価が上がった。

 ガバナンスイメージスコアランキングの上位には、トヨタ自動車や花王、武田薬品工業など取締役会に多様性がある企業が選ばれた。

■ ガバナンスイメージスコアランキング上位50社
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体制が整っている企業を評価

 1位のトヨタは、2011年に取締役会を27人から11人にスリム化、現在は女性や外国人の社外取締役3人を含む9人体制で運営している。花王は、社内4人、社外4人の体制だ。武田薬品は、ボードメンバー16人中11人が社外取締役で、クリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)をはじめ8人が外国人取締役という布陣になっている。同社は20年4月から「クローバック制度」を導入して話題を集めた。これは、会社に大きな不正があったような場合に役員報酬を返還するというガバナンスを律する制度である。

■ 多彩な顔ぶれの武田薬品工業のボードメンバー
出所:武田薬品工業の企業サイトを基に作成
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 設問別の武田薬品への評価を見ると、ESGの専門家の見立てと大きな違いはないと思われる結果になっている。「役員の選任や報酬についての情報を十分に開示している」と「株主や投資家などに配慮した経営をしている」で3位、「法令を順守している」で4位、「役員や従業員が社会的な規範に則した行動をしている」で5位、「取締役や監査役が機能しガバナンスが効いている」で6位などの評価になった。

 自由意見にも、「IR(投資家向け広報)情報が見やすい。CEOが外国人でグローバル化が進んでいる」と評価する声があった。確かに、同社の開示はステークホルダーにとって分かりやすい。例えばウェブサイトでは、株主総会の模様を録画で公開しており、ウェバー社長の説明だけでなく、取締役会議長である坂根正弘氏の取締役会の運営方針なども知ることができる。

 イオンに対する評価は特徴的だ。ガバナンスイメージスコア全体では10位だが、「株主や投資家などに配慮した経営をしている」で2位に食い込んだ。同社の株主数は日本有数で、個人株主を大切にする代表的な企業の1つだ。株主が割引が受けられる優待制度などを設けている。こうした背景を反映した評価になっているようだ。

 企業がどのようなガバナンス体制を構築し、それが機能しているのかを一般の消費者やビジネスパーソンが判断するのはハードルが高いと思われたが、大枠では間違った評価ではないようだ。

 ただ、メディアのニュースに大きく取り上げられるなど強い印象を与えた事件があると影響されやすいというイメージ調査の弱点も評価結果に表れている。

 例えば、「内部通報制度など社内の問題を改善する仕組みあり」という設問に対して上位に選ばれた企業を見ると、2位の大和ハウス工業は19年12月、必要な実務経験を満たさずに「施工管理技士」の資格試験を受験して合格した技術者が349人いたと発表し、大きく報道された。内部通報を受けて社内調査を実施した結果を国土交通省に報告した。内部通報で見つかった不備を社外に開示するとともに、社員の実務経験を一元管理するという対策を打った企業の姿勢に対して、一般にも評価されたと考えられる。

 こうした“事件”がないと、内部通報制度が機能しているのかは、外部からは見えにくい。本当に内部通報制度が機能していて、事件になる前のヒヤリハットの段階で対策を打っている企業は高い評価を得られない可能性がある。