「ステークホルダー資本主義」という言葉が普及し定着しつつある。そもそもの発端は米企業経営幹部で構成される非営利団体「ビジネス・ラウンドテーブル」だ。2019年8月、株主中心で短期的な利益追求を重視したこれまでの資本主義の問題を指摘し、これからは顧客、従業員、取引先、コミュニティ、株主といった全てのステークホルダーの利益にコミットすると発表した。

 このステークホルダーの1つに「次世代」を加えられないだろうか。10年、20年後に社会を支える世代だ。「次世代」でも「若者」でも「子ども」でもよい。

 こう思う理由はシンプルだ。企業の長期経営計画の結果、将来、社会や環境に起こり得るポジティブまたはネガティブなインパクトの影響を直接的に受けるのは、その計画を立案した現役世代ではなく、他でもない次世代を生きる人たちだからだ。

パンデミックによる次世代への影響

 21年年明け早々、都心部で2度目の緊急事態宣言が出された。著者含め、子を持つ親の1つの心配はまた休校、休園になるのかという点だ。親の経済活動の休止だけではなく、とりわけ心配されるのは人格形成期にある子ども(本稿では18歳以下とする)への影響だ。

 経済協力開発機構(OECD)が発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が子供に与える影響に対処する」によれば、20年前半に188カ国で全国的な学校閉鎖が実施され、15億人以上の子どもが影響を受けたという。外出禁止やソーシャルディスタンシングの環境下で、栄養不足や家庭内暴力、メンタルヘルスの悪化といった悲惨な状況が世界各地で報告された。デジタル化の普及で学校閉鎖による教育機会の喪失は緩和できたものの、貧困状態にある子どもほど、端末とインターネット接続のある学習環境から遠のいてしまうのは各国共通のようだ。

 国内でも18歳以上の大学生、特に新1年生のメンタルヘルスが悪化しているという調査結果や報道が見られた。アルバイトができずに経済面で困難に陥っている学生も多い。次世代を取り巻く教育環境への憂慮から、多くの企業が次世代の教育の権利を守るための支援策を打ち出した。例えば、20年4月にソニーが立ち上げた総額1億ドル(約108億円)の基金は、医療分野への支援の他、教育分野で休校措置で登校できない子どものために、テクノロジーを使った教育支援を実施している。その他、IT関連企業や教育関連サービス企業がコンテンツ提供、端末貸与、ネットワークの無償提供などを通じた学習支援を打ち出した。

次世代リーダーへの注目

 上記で挙げたのはほんの一部の事例だが、今後、より多くの企業が次世代への配慮を進めるようになるのではないだろうか。一般論として、大企業による支援はそれが対象とする社会課題を世に知らしめる大きな機会となる。