あらゆる産業でのDX(デジタルトランスフォーメション)が進む中、企業の非財務情報の取り扱いにおいてもその波が及んでいる。この数年、企業や自治体のESGやSDGsの取り組みに関する情報について、データベースを構築しようと様々なプロジェクトが動いている。そこで今回は企業の非財務情報のデータを取り扱う海外のESG評価機関の動向や、国内における新たな動きをいくつか取り上げ、多面的に進化するESG/SDGs情報のデータベース化について考察してみた。

そもそもESG評価機関とは

 いわゆる、ESG評価機関が調査・分析し、データを提供してきた相手先は機関投資家や金融機関である。主に上場企業のESG側面の取り組みに関するデータが中心だった。ESG評価機関は企業に質問票を送付し、その回答に基づき評価する手法が一般的で、これに企業の公開情報や不祥事情報、個別インタビューの結果などを統合し、各機関が独自の評価体系に基づいて分析するという形に変化を遂げてきた。近年では、このプロセスにAIを用いた情報収集を行う評価機関も徐々に増えている。

 直近の数年は、インデックス算出や信用格付調査を実施する金融情報提供サービスの大手各社が、世界の主要なESG調査機関を次々に買収する動きが目立つ(下表)。相次ぐM&Aは、財務情報と非財務情報はもはや切り離して語ることはできないものだということを知らしめた。

■ESG評価機関の買収例 (2019~21年)
■ESG評価機関の買収例 (2019~21年)
出所:各社プレスリリースに基づき著者作成

財務・非財務の統合とDX

 ここでもDXが鍵のようだ。2020年10月に米金融情報大手ファクトセットが買収した米トゥルーバリュー・ラボでは、AIの自然言語処理と機械学習によって膨大なWeb情報から企業を評価する。19年10月に米インデックス大手MSCIが買収したスイスのカーボン・デルタは気候変動シナリオのリスク評価や分析が特長だ。その後MSCIは同社の知見を活かし、気候変動特化型の株式インデックスを開発している。

 米格付け大手ムーディーズは、自社の気候関連ソリューションを充実させるため、2社を傘下に収めている。同分野での企業のリスク分析に定評のあった仏ヴィジオ・アイリスと、世界の自然災害や地理情報、気候情報などの独自データセットに基づき気候リスク評価を進める米フォー・トゥエンティー・セブンだ。

 この分野のDXが進んだ背景は、財務情報と非財務情報の相関に関する調査分析に対するニーズが急速に高まったのも一因だろう。SDGsとパリ協定がまとまった15年以降、多くの投資家や金融機関が、インデックス単位やファンド単位などの様々なレベルで、非ESG投資と比較してESG投資の運用成績が上回っていることを証明するための分析を行ってきた。特に20~21年のCOVID-19の初期の感染拡大期では、ESGファンドが非ESGファンドよりも値崩れせず安定していたという分析を複数の金融機関の発表で目にしたのは記憶に新しい。